第3話 診察と面会
長い説教タイムの後、急に我に返った俊宇はなすべきことに思い至ったようである。
「侍医を呼んでまいります。同時に陛下に浩然様が覚醒されましたことをご報告してまいりますので、浩然様は早々に寝台にお戻りください」
寝台に犯罪者のごとく強制連行された。(扱いが酷いではないか!!)
そして俊宇は脱兎のごとく部屋を飛び出していった。
程なくして侍医が医官を二人従えて入室の許可を求めたので、「許す」と返事をした。
入室して拱手をしようとしたのだが、「今更面倒な礼は不要である。診察を行え」と指示した。
「浩然様がお気付きになれましたので、臣は安堵致しました。では、早速お体を調べさせて頂きたく存じます」
侍医は年の割に早い動作で近づいたと思ったら、瞼をめくり瞳孔を確認し、舌を引っぱり出したり、脈拍やリンパ腺を調べたり、挙句の果てには人の頭を<あっち向いてホイ>よろしく頭を上下左右に動かしたりして確認し始めた。
「浩然様、悪寒などありませんか?」と問われたので、「ない」と答えた。
次に侍医は医官二人に「丁寧に浩然様のご姿勢を変えよ」と指示して頸椎周りや腹や背中や全身を触診し始めた。本人の言葉と裏腹に俺の扱いは雑だと思った。
現代ならCTスキャンやMRIで確認すれば良いと思いつつ、この時代では仕方がないと諦めた。
どう考えても罰ゲームか拷問と思われる時間が経過して、診察は終了した。
侍医はしばし黙考していたが、結論が出たようである。
「特に異常は無く問題はございません。ですが、念のため3日ほど安静にされるよう進言致します」
かくして、悪いこともしていないのに三日の謹慎が決定してしまった。
何もすることがないが・・・・
「父上(皇帝)と母上(皇后)にご心配をおかけしたお詫びと回復した報告をするため、三日後に拝謁のお伺いを頼む」と俊宇に命じた。
すると、タイミングを合わせたように侍女が突然に来訪の報せを告げた。
「皇后さまと貴妃さまと公主さまがお見えになりました」
扉が大きく開かれ、浩然の実母・皇后(楊 芷瑶 ヤン ヂーイャォ )と貴妃(黄 乐瑶 フゥァン ライャォ )とその娘で公主(思妤 スーユー )が急いで入ってきた。
「浩然、目覚めてくれたのね。母は心配で、心配で・・・良かった」と号泣しながら縋りついてきた。
「浩然兄様、思妤は心配で胸が張り裂けそうでした」と義母妹が涙目で足元に縋りついてきた。
自分を含み二人の子供を生み三十路を超えたにもかかわらず、全く容色の衰えを感じない美女と天使のような美少女と抱きつかれ、思わず動転してしまう。
異母妹に至っては(か、かわいい!抱きしめてみたい!)と不埒な想いが頭をよぎってしまう。
確かに体は貴女の息子と義兄ですが、魂は榊 晃で異世界の人間なのだから・・と真実を言いそうになった。
とは言え、多少の罪悪感はあるものの浩然になり替わって息子や義兄を演じる以外手立てはなく、泣いている妙齢の美女と美少女を慰めることを優先することにした。
母と義母妹の涙をそれぞれの手巾で拭きながら・・
「両母上、ご心配をおかけして申し訳ございません。浩然はこれからは無茶を致しません」
「涙をお拭き下さい。侍医が異状も問題もないと診断してくれたので、ご安心下さい」
「兄は気を付けるからね。泣かないで」
と優しい声で言いつつ、背を穏やかに何度も擦って慰撫しているうちに母も義母妹も落ち着いたようである。
「分かりました。母はやっと安心したわ。この様子を陛下にも伝えるわ」
「兄様、思妤もホッとしました」
それまで手持無沙汰で見ていた貴妃も何度も頷いて徐々に全員柔らかな笑顔になった。
一段落したので母と義母妹はそれぞれ立ち上がり、一同揃って退室してくれたので安堵のため息が漏れた。
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