第12話 ニュース
◆
『僕、隣の部屋なんです』
微笑む口元はマスクで見えない。瞳は笑っている。
「一一夢か」
つけっぱなしのテレビからは、夜のニュースが流れている。音がうるさく感じボリュームを絞りつつ眺める。寝落ちしてしまった様だ。
コメンテーターとキャスターは人間、タレント枠にはミアという人気のダンピールであるアーティストが座っている。彼女は顔色が蒼白いが、メイクで綺麗にカバーしている。
『「ヴァンパイアが現れた」というSNSでの目撃情報が相次いでいますが、その点についてどう思われますか?』
『そうですね。、フェイクニュースではないのか、そこを疑うべきなのではないですか?』
人間はコメントをふられているが、ミアというダンピールは頷いているだけでコメントを振られていない。ダンピールユニオンからの指示なのかもしれない。
『次のニュースです。ところで、ミアさんに質問なのですが、この鳥は何だかわかりますか?』
『えっ、これって…かわいい』
話題が移った途端にミアの大きな瞳にカメラがズームする。
ダンピールに求められる役割も、時代により様々だ。以前はヴァンパイアの退治優先、そして今は一部の精鋭のみが、警察と連携をとり彼らを退治するため、その他大勢のダンピールはエンタメ分野他で社会に参加しているのだ。
ヴァンパイアにもしも会ったら
出来ることはあるのだろうか?
ダンピールユニオンの動画では、彼らに会ったしまった場合の動きや連絡先を伝えている。
「この通りに出来るかな。わっ、、ん?」
不安を覚えていると、突然メッセージがはいり驚いた。
『連絡来ないから来ちゃいました♪』
担当の柚木だった。
「どうしよう…全然進んでないのに。でも、エッセイは書けてたか」
「四宮さん!出来てますか?」
口は笑っているが、茶系のフレームの眼鏡の中の目が笑っていない。
「も、もう少し、かな。良かったのに、、来なくても」
「勿論。連絡下されば、僕だって来ません。えーと、ちょっと拝見します」
「あ、今こっちは出来てて、送信、と。後はまだ」
「成る程。ありがとうございます。もう続編は難しそうです?」
チラリと冷たい視線を投げられる。身長も標準位であるし、顔も兎に似たかわいい系なのに恐怖だ。
「鋭意執筆中…です。だよ、はい」
「期待してますけど、あんまり遅いと」
辛い
そうだ、あれを使おう!
「あ!」
「あ?」
柚木がふいをつかれて目を丸くした隙に、キッチンに購入してあったビールを持ってきた。
「ビール、前に貰ったんだけど、俺は飲めないから。はい」
「いいんですか?これ、新商品だ。すいません、ありがとうございます。ちょうどきらしてたんです。じゃあ、そろそろ…失礼します」
「うん。また」
確信犯っぽいけど
いい笑顔を浮かべると、去っていった。
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