第13話 窓際

仕事終わりに軽く食事をして帰ろうかと、街をぶらつく。居酒屋は騒がしいし、カフェかファミレスあたりかと考えた末、なんとなく最寄駅まで来てしまっていたので、先日お隣さんである四宮と来たカフェに来た。


もう12月か


木枯らしも吹かず、凍える程の寒さではない。それでも街はイルミネーションに彩られ、いかにもクリスマス全とした雰囲気を醸し出している。去年はまだ相手がいたので、その相手と世俗っぽくラブホに行っていた。男であれ女であれ、好きな人間がタイプというのが、かなり誤解されてきたが、今はまだいい時代になったのだろう。


「いらっしゃいませ」


「えーと、これで」


「お待ち下さい」


「・・はい」


たらこスパゲティとコーヒーを頼み、ぼんやりと待つ。スマホを見ればいいのかもしれないが、疲れているので席で見ることにする。店員のよく訓練された動きはきびきびしている。それを見ていると、何故か四宮のゆったりとした佇まいを思い出していた。


今は仕事中かなぁ


人影がまばらな店内の窓側に陣取り、フォークを回しつつスマホを眺める。しばらく見ていたが飽きたので、窓の外を見ると会釈する人影があった。


おぉ

噂をすればなんとやら


今日は外出していたのか、ベージュの薄手のロングコートが柔らかな雰囲気で素敵だ。カフェに入ると、人目を集めながら隣に来てくれた。羨望の眼差しを感じ、優越感に少しだけ浸る。


「澤村さん…偶然ですね。隣、いいですか?」


「あ、どうぞどうぞ。お出かけされてたんですか?」


殆ど食べ終わっていたスパゲティを奥に避け、荷物をどけると、隣に腰かけた。


「はい。どうにも煮詰まってしまって、気分転換と資料集めに。澤村さんは、、お仕事帰りですか?」


「はい、まぁ、作るのも面倒で。はは」


「そういう時もありますよね…そうだ。やっと続編が進みそうで。もう学生より、主人公を社会人にしようかなぁって、澤村さんのおかげです」


微笑みが眩しく感じる。


癒されるとゆうか


「いやいや、何もしてませんって。俺も一一楽しかったですし。お話できて」


「え、あ、はは。それは、良かった」


ダンピールだからか、顔は赤くないのに、照れて笑っているのがわかり、彼もまた一人の人間と変わりないのだ、と嬉しくなる。


この感じだと

こちらからグイグイ行けばいいのかも


「今度は、そうだなぁ。水族館でもいきましょうか?ちょうどみたいのあって。あ、もし良かったら」


「それは、えと、はい。久しぶりなので、案内お願いしますね」


「承知しました!」


もしかして結構好きなのか、俺はこの人が

いや、人じゃないけど


ふわりとしたコーヒーの良い香りにつつまれて考えるのだった。











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