第13話 窓際
◇
仕事終わりに軽く食事をして帰ろうかと、街をぶらつく。居酒屋は騒がしいし、カフェかファミレスあたりかと考えた末、なんとなく最寄駅まで来てしまっていたので、先日お隣さんである四宮と来たカフェに来た。
もう12月か
木枯らしも吹かず、凍える程の寒さではない。それでも街はイルミネーションに彩られ、いかにもクリスマス全とした雰囲気を醸し出している。去年はまだ相手がいたので、その相手と世俗っぽくラブホに行っていた。男であれ女であれ、好きな人間がタイプというのが、かなり誤解されてきたが、今はまだいい時代になったのだろう。
「いらっしゃいませ」
「えーと、これで」
「お待ち下さい」
「・・はい」
たらこスパゲティとコーヒーを頼み、ぼんやりと待つ。スマホを見ればいいのかもしれないが、疲れているので席で見ることにする。店員のよく訓練された動きはきびきびしている。それを見ていると、何故か四宮のゆったりとした佇まいを思い出していた。
今は仕事中かなぁ
人影が
おぉ
噂をすればなんとやら
今日は外出していたのか、ベージュの薄手のロングコートが柔らかな雰囲気で素敵だ。カフェに入ると、人目を集めながら隣に来てくれた。羨望の眼差しを感じ、優越感に少しだけ浸る。
「澤村さん…偶然ですね。隣、いいですか?」
「あ、どうぞどうぞ。お出かけされてたんですか?」
殆ど食べ終わっていたスパゲティを奥に避け、荷物をどけると、隣に腰かけた。
「はい。どうにも煮詰まってしまって、気分転換と資料集めに。澤村さんは、、お仕事帰りですか?」
「はい、まぁ、作るのも面倒で。はは」
「そういう時もありますよね…そうだ。やっと続編が進みそうで。もう学生より、主人公を社会人にしようかなぁって、澤村さんのおかげです」
微笑みが眩しく感じる。
癒されるとゆうか
「いやいや、何もしてませんって。俺も一一楽しかったですし。お話できて」
「え、あ、はは。それは、良かった」
ダンピールだからか、顔は赤くないのに、照れて笑っているのがわかり、彼もまた一人の人間と変わりないのだ、と嬉しくなる。
この感じだと
こちらからグイグイ行けばいいのかも
「今度は、そうだなぁ。水族館でもいきましょうか?ちょうどみたいのあって。あ、もし良かったら」
「それは、えと、はい。久しぶりなので、案内お願いしますね」
「承知しました!」
もしかして結構好きなのか、俺はこの人が
いや、人じゃないけど
ふわりとしたコーヒーの良い香りにつつまれて考えるのだった。
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