第11話 夕食

珈琲を飲みながらふと思う。通常人間同士なら夕飯をどうする?という会話になるものだが、彼にそれを持ちかけるのは少し違う気もするのだ。


でも何か食べたいけど

もう少し話したいし…


グゥゥ


「あっ、あは、お腹が」


恥ずかしい

なんてタイミングだよ


「すいません。気がつかなくて…夕食時でしたね。そうだ!」


照れ笑いしていると、四宮が立ち上がりキッチンに行き戻ってきた。手に土産物の饅頭の入った箱や、柿の種の袋を持っている。彼には似合わない代物だが、自分には今必要な物だ。


「たまに担当が来て置いていくんです。良かったらどうぞ」


「ありがとうございます。いただきます。自分の家みたいに食べ物を置いていくって」


程よい甘さの饅頭を食べ終わる。


もしかして、親しいのかな?


少し妬けると考える思考回路は、既に彼に対する独占欲が垣間見えて我ながら気持ち悪い。


「はは、担当って俺みたいな筆がのろい作家の尻を叩く役目があるので、たまに来るんです」


尻を叩く・・ヤバ、変な想像した

消えろ消えろ


「どうか…しましたか?頭」


「い、いえ、頭のマッサージを。目が疲れたなぁって。はは、は」


頭を抱えていた所を指摘され、慌てて目の回りをマッサージする。


「いいですねぇ。教えてくれませんか?」


「えっ、あ、はい。えーと」


近いなぁ


覗き込む瞳の色がが本当に紅く綺麗な色で、妙に動悸が激しくなってくる。


「やってあげます」


「いいんですか?あぁ、その辺すごい効いてる感じがします…ふぅ」


触れてみたくなり、こめかみや目頭、額にマッサージを施す。ひやりとした感触は低めの体温に寄るからなのだろうか。


「首も凝ってます、ね」


「すいません。変なとこ人間ぽくて、困っちゃうんですよね。はぁっ」


無防備に接してくれているのは嬉しいが、他の人間にもこうだとすると少し心配になる。


「オワリですっ」


「すごい気持ち良かったです。ありがとうございます。プロみたいだ」


「そんな。でも良かったです」


顔色は変わらないが、よこしまな気持ちからだった行為を喜んでくれた様で、ほっと安堵したのだった。











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