第6話 コンビニ2

「そんな驚かなくてもいいのに」


「何だ、お前か」


「それは雑すぎ」


弟の朝陽あさひだった。専門学校に行っているが、暇に任せて訪ねて来る。トマトジュースを一つ手に取ると、かごに無造作に入れてくる。


「これも」


「仕方ないな」


「後何かあったっけ…?」


「探さなくていい」


ここぞとばかりに店内を物色するのは止めてもらいたい。人間の母は出産後数年で病気により亡くなり、ヴァンパイアの父は行方不明。ほぼ弟と二人で生きてきた。その間、甘やかし過ぎたのか、わがままに育ってしまった。


子育て失敗か

いや、産んでないけど


「あんまり無いんだけどね、日用品位だよね」


「確かに」


可愛いお菓子も、黄金色のチキンも無用の長物なのだから、味気ないものだ。人間はつくづくある意味豊かな暮らしをしている。


「ありがとうございました」


店員に見送られコンビニを出ると、朝陽が横に並ぶ。瞳の色が同じでやはり安心はする。


「最近はどうなの?とか聞いてくれないの?実月」


「一一最近は?あふ…」


面倒な子だ


欠伸がこぼれた。眠い訳ではまだないが、疲れている。


「興味無いんだなぁ。もう。彼女と彼氏が出来たよ」


「それは…おかしいだろう?どっちかにしないと」


「どっちも好きなんだ」


「事件になる前に選ばないと」


「職業病?はは」


明るく笑っている。


「朝陽、人間は怖いんだよ」


「へー」


真面目に聞かない弟にため息がこぼれた。








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