第7話 癒しオーラ1
◇
地道な事務仕事が終わり、会社を出ようとエレベータに乗り込むと、後ろから同僚の
「お疲れ様です」
「お疲れ様です。週一とはいえ疲れますね」
眼鏡を中指で押し上げると橘が呟く。声が基本小さいのだが、流石に年単位で同じ部署にいれば聞き取れる様になるものだ。今日も眠たそうな眼差しをしている。
「そうですねぇ。橘さんどの辺の席にいたんですか?」
「澤村さんのかなり斜め後ろです」
いたの気がつかなかった・・
フリーアドレスもいいのか悪いのか
「そうなんだ。あ、家の猫は元気ですか?」
彼は猫を飼っていて溺愛している。そのため、表情が普段乏しいのにガラッと変わるのが面白い。
「よく聞いてくれました!これ、最近のうちの猫なんですけど、可愛すぎて」
黒猫が床面に甘えた様子でお腹を見せている。
「へぇ、可愛い。何歳になりましたっけ?」
「五歳です。疲れてても、こういうの見るとがんばろうって思えます」
「いいなぁ。なんか」
俺にはそんな対象がないし
鼻の下を伸ばしている橘は通常では想像できないだけに、猫の可愛さの破壊力を感じる。
「飼えばいいじゃないですか。澤村さんも」
「うーん。世話しきれるかなぁ。自信ないんで」
「なるほど。慎重なのはいいことですけど。あ、じゃあ、ここで」
「はい。じゃ」
路線が異なるため、駅で二手に別れた。
癒しオーラか
別にそういった出会いが無かった訳でもないのだが、長続きしない。相手が求めているものと、自分のもっているものがおそらく違うのか、自然消滅してしまったりする。電車の車窓から街の灯りが明るく見えているが、自分の心は満たされない何かを抱えているのだった。
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