第9話 恋人桜田くんを購入
「お買い上げありがとうございます。」
箱に入ったフィギュアの桜田くん。
あー、買ってしまった。
袋の中から声がする。
「ケイタ、箱から出してくれ。息ができない。」
「桜田くん、何をバカなこと言ってるんだ。
フィギュアだろう。」
「えへっ。」
「桜田くん、可愛くないぞ。
それに声がでかすぎる。他の人に聞かれたらまずい。」
「ケイタお前はバカだな。私のこの可愛い声が聞こえるのはケイタの脳内だけさ。
さっき階段で私の声が聞こえただろう。
あれだ。あれ。」
「そうだったな。」
「それよりケイタ、箱から出してくれ。
外が見たいんだ。」
「はい。はい。分かりしたよ。桜田くん。」
フィギュアの桜田くんは
気持ちいいなと袋の中で動いている。
「桜田くん、頼むから動かないでくれ。」
「大丈夫だ。単なる揺れだ。揺れ。」
「それから、お願いがあるんだけどさ、」
「なんだ?ケイタのお願いは。」
「その言葉遣い、何とかならないか。
確かに君はきれいで美しい顔立ちだ。
でもその容姿と言葉遣いが一致しない。
僕の理想はなんというか、もっと優しい声で
お姉様系の話し方が好みで。
それに君は僕の恋人なんだからさ。」
「ケイタ。なんだそれ。ケイタの好みは十分に理解した。でも無理だ。
ケイタが出会った小6の時の私は、今の私だ。性格も声も変えられないぞ。
勝手にイメージを持ったのはケイタの方だろう。ケイタが私に合わせろ。」
「えー、ほんとイメージが崩れて行くー。」
「まあ、でもこの外見は変らなく美しいのだから、いいじゃないか。」
「まあ。」
「それに私がケイタを呼んだのは恋人ごっこのためじゃない。
PC内パトロールのためだ。ここでいろんな情報を聞いた。
かなりPC内が乱れているらしい。
完全なる2次元PCマザーに誰かがハッキング、アタックしたらしい。」
「2次元PCマザーのことは早川くんから聞いている。」
「ケイタ、ここでライバルの早川の名前を出すとは、お前はやっぱり恋人失格だな。」
「なんだそれ。それよりその情報のことを話してくれ。」
「そうだな。2次元PCマザーがケイタ達の3次元の世界の平和を保つように不適切な情報を削除しているのは知っているな。」
「あー、聞いたよ。
でもそれは自分の推しキャラが深夜2時からの間のパラレル時間にご主人様に不利になるネット情報を削除している、個人レベルのことだろう。」
「そうだ。しかし少しとらえ方が間違っている。
個人レベルで守っている削除は実はすべての真実につながっているんだ。」
「わかりやすく頼む。」
「そうだな、個人のネット情報はPC内で光のデーターとして飛び交っている。
その光のデーターには秩序はない。
だがその無秩序の光を操る悪いバクがいるとしたら?世界はどうなると思う?」
「混乱する。」
「そうだ。一瞬にして混乱。個人の消滅じゃなく、下手をすると世界が消滅する。」
「なんかコワくないか?」
「そうだな。コワいが、まあ、正直そこまで来ると神レベル。私達、PC内パトロールの手にはおえない。それに私達は神じゃない。」
「なんか、ややこしそうだな。」
「そんなことはないぞ。言っただろう。
まずは個人レベルで不利益ネット情報削除。
個人のハッピーが世界平和だ。」
「桜田くん、話が大きくなってないか?」
「そんなことはないさ。そういえばケイタ中間テストどうだった?
赤点あっただろう。なんで知ってるんだ。
ネットに出てたぞ。」
「わあー削除してくれ。」
「ははは。早川に頼むんだな。」
「桜田くんは何をするんだよ。僕を守ってくれないのか?」
「私には任務がある。まあ、とりあえずケイタの家に行こう。
ライバルの早川にも会いたいしな。」
「ケイター!」紙袋を持ったフトシとシュウジが僕を呼ぶ。
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