第5話 ケイタの部屋
土曜の学校は部活の生徒以外、あっさりと
終わる。
今日はフトシ、シュウジが家に来る。
『僕の大切な早川くんに会いに来る。
彼女に早川くんに許可をとるべきだったのか?』
シュウジがあっさり。
「ケイタ、何をブツブツ言ってるんだ。」
一般生徒達には聞こえないが、僕らオタク達の
ひとり言は僕ら同志には丸聞こえ。
「じゃあ、帰るか。」
フトシが「ケイタの家に行く前に腹減ったあー。駅前のバーガー食べてかない?」
「そうだな。」シュウジも「のった。」と僕らはバーガー店に向かった。
土曜の昼。学生も多く、混雑してる。
「人が多い。切り替えるぞ。テイクアウトだ。」
キャアーキャアーとうるさい女子の声。
見るとギャル色強めのアヤにヒヨリ達がオーダー側に並んでいる。
僕らは気づかれないようにそーっと
セルフオーダーで注文。
こっちは割と空いていてすぐに注文で来た。
目ざといアヤが「そこオタクたち!」と僕らの方に来る。
「これやって!」セルフオーダーを指さす。
なぜがフトシが任せろと言わんばかりで
アヤ達の注文を瞬殺完了。
アヤに感謝された。「サンキュウ!」
女子達とすれ違いに
ヒヨリの「ありがとう」の声が僕の耳に。
えっ?
かき消すように僕らの番号が呼ばれる。
「217番」
ヒヨリの今のありがとうは?朝のやつか?
まあいい、僕には関係ない。
ありがとうも聞き間違えかもな。
僕らはテイクアウトで店を出る。
少し冷えたバーガーの袋を抱え、家に着く。
両親はいない。仕事だ。
フトシは中学が同じだったし、何度か家に来ている。迷わず僕の部屋に行く。
机にバーガーの袋を置いて
早川くんに挨拶。
「こんにちは早川さん。」
フトシは手を合わせながら、拝むように
早川さん見倒す。
「バッシン。」僕はフトシの後頭部に手で突っ込みを入れる。
「フトシ、僕の大事な早川くんをその、
いやらしい目で見るな。バーロー。」
同時に僕は、
早川くんのフィギュアに手を伸ばしかけの
シュウジの手を「パチン。」と叩いた。
「相変わらず、ガードが硬いな。ケイタ。
でも早川さん誰かに似てないか?」
「そうか?
僕の大切な早川くんだ。触るなよ。2人共。
ほら、早川くんも『隊長!』って言ってるじゃないか。」
フトシも「すまない。魔が刺した。オタクとしたことが、つい美しすぎて見惚れてしまった。
しかし、ケイタよ。早川くんには悪いが
所詮、フィギュアだ。
僕のモフモフのピロちゃんに比べたら、劣るな。」
フトシのピロちゃんは確かにモフモフで
可愛い真っ白なうさぎのぬいぐるみだ。
魔法の呪文を唱えると、可愛い魔女っ子に変身キャラだ。
中学の時に無断で耳を触ってしまいフトシから
半泣きで猫パンチを食らった。
シュウジも負けずに「それを言うなら、僕の
ロボットGには誰も敵わないさ。
合金の輝く滑らかなホルム。ロケットパンチも飛ばせる。両肘からミサイルも出るぞ。」
シュウジはロボットオタクだ。
基本オタクは自分の推しのキャラを自慢をする。推しへの愛が深すぎるからだ。
これは当たり前のことでオタク同志の集まりでは、いつものことだ。
自慢しても誰もキモいとは言わないし。
妬みもない。
要するに自分の推しキャラが一番だと自負しているし自信がある。
それに、はじめから自分と他人が一緒でないことをみんな知っている。
オタクは本質的に自立系の強い生命体なのだ。
そこが一般生徒達とは違う。
そこを認識できない未熟なオタクがたまに一般生徒と交わり衝突し事故ってしまう。
「ところでPCネット内パトロールの件だ。
教えてくれ。」
フトシが「僕のピロちゃんは深夜2時になると
僕の部屋の時間を止める。2:59までだ。」
シュウジも「同じだ。」
僕も、と思いながら僕は冷えたバーガーを
がぶりと飲み込んだ。
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