第8話

オーディションの当日が来た。

このオーディションでヒロインに選ばれれば、映画の主役になれるとあって、応募者は2500名だった。

その殆どが第一次の書類審査で落とされた。2次審査に残ったのは50名である。

波音は梨花と一緒にオーディションが開かれるホールの前にいた。

「だって初めてなんだもん。付いて来てー!」

波音は梨花にせがまれて東京までやって来た。

「頑張れよ」

「うん」

ホールの前にも若い女の子で溢れている。

あれがみんなオーディションを受けるのだろうか。

梨花はゴクリと唾を呑み込んだ。

波音は優しく背中を撫でた。


2次審査が始まった。

梨花は25番だった。

まずは歌の審査が行われた。

主役は歌手希望の女の子である。

だからまずは歌が歌えなければ話にならない。

梨花はバラードを歌った。

そしてダンスと台詞読みのテストがあった。

2次審査を勝ち残れるのは10名である。

とてもレベルが違う……

梨花は廊下でガックリと肩を落としていた。


「私は10番を推しますね」

審査員の一人が言った。

「ダンスもいいし、歌も少しハスキーボイスでいいじゃないですか」

「私は25番を推します」

「しかし25番のダンスは酷かった」

「ですが歌が上手い。ダンスは特訓すればある程度は踊れますが、歌は特訓しても元が無ければ…… 」

こうして梨花は2次審査に合格したのである。


「そうか。2次審査通ったんだな。凄いよ。梨花は」

「当然でしょ」

梨花はそう言うと波音の腕に持たれ掛かった。

少し手が震えているのを感じた。

「頑張ったな。梨花」

波音は初めて梨花の髪を撫でていた。

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