第5話
「そうか。文化祭の劇に出演するのか。何の
役?」
帰り道も梨花は当然のように腕を組んでいた。
「もちろんヒロインよ。決まっているでしょ
う?」
梨花は澄ました顔で言った。
「……だよな」
咄嗟に言葉が出なかった。
「波音と付き合うようになってからいい事ばかり起こるの」
「それは良かったな」
梨花は鞄から一枚の紙を取り出した。
「何、それ?」
「東京で開かれるオーディションの申込書。受けてみようと思って」
「いつ?」
「9月なの。私、これでヒロインに抜擢されて芸能界デビューなんてなったらどうしよう!」
何処から来るんだ?
その自信は……!
波音は驚いた目で梨花を見ている。
「波音も応援してね。そうなったとしても東京と鎌倉だから逢えるし」
「そうだな」
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