第5話

「おはようございます」

「ただいまでしょ。想ちゃん」

母親は笑った。

「ただいま」

「お帰り、想ちゃん。ちょっと見ないうちに逞しくなったんじゃない?」

「バスケの練習がハードなので」

「そう。でも元気そうで良かった。食事はちゃんと食べてる?」

「はい。寮なので」

母親はサッサと想を居間に入れた。

「お帰り、想ちゃん。元気そうで良かった。お腹空いたろ?」

父親も優しい笑顔で出迎える。

ああ……

帰って来た。

温かな家族の中に。


昼ごはんはオムライスとスープだった。

それを食べながら、想は光陽のバスケ部や新しく出来た友達の話をした。

「お母さん、私、来月名古屋に行きたい。行った事ないんだもん」

心がスープを飲みながら言った。

「いいわよ。交互に、静岡と名古屋で逢えばいい」

母親は明るい笑顔で同意した。

「ゴールデンウィークは休みはあるの?」

「全部部活です」

「そうなの。流石に強豪校は凄いのね」

母親は残念そうである。

「あ、でもお盆は8月13.14.15と休みです」

「本当?じゃあみんなで富良野へ旅行に行こう。ねえ、お父さん、富良野のラベンダー畑見たいって言ってたし」

「でもお母さん、ラベンダーは7月中旬が見ものだってネットに載ってた」

心が言うと、母親はがっかりしたような声を出す。

「心は何処へ行きたい?」

「沖縄。水族館に行きたい」

「想ちゃんは?」

「俺も沖縄がいいです」

「さあ!じゃあアンタ達はデートに行っておいで」

母親はパンと手を叩いた。

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