第4話

「心、ケーキを作っているの?」

夜中に母親が台所を覗くと、エプロン姿の心がボールをかき混ぜていた。

「うん。明日、想ちゃん帰って来るから。好きなチョコケーキ作ろうと思って…… 」

「そりゃあ、想ちゃん喜ぶよ。バスで帰って来るんだろ?」

「うん」

「帰りは名古屋まで送って行くからね。だから思い切りデートしておいで」


翌日の朝10時、高速バスを降りた所で心が待っていた。

他に誰もいなかったので、バスが行くのを待って心と想は抱き合った。

心の左薬指には婚約指輪が光っている。

心の母親が父親から貰った指輪だった。

「お帰り。想ちゃん」

「ただいま。心」

3週間ぶりの再会である。

想は少し逞しくなっていた。

でも優しい笑顔は変わっていない。

「どこ行きたい?」

「お義父さんやお義母さんに会いたい」

「そう言うと思った。ちゃんと用意してるから行こう」

こうして2人は自宅に向かって歩き出したのである。

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