第12話

「嘘でしょー!」

「何処をどう間違えたら涼真君と氷室幸がそうなるの⁈」

翌日の学校はその話題で持ち切りだった。

「身の程知らず!」

幸は下駄箱で靴から上履きに履き替えようとした時に、いきなり違うクラスの女子生徒からそう言われた。

「自分の顔、鏡で見た事ないの?」

「他の男子ならともかく、涼真君に手を出すなんて!」

「自惚れんな!このブス!」

もう悪口の集中攻撃である。

「自分が選ばれなかったからって文句言ってるんじゃないわよ!」

半泣きの幸を庇うように一人の女生徒が出て来た。

親友の矢部恭子である。

「恭子…… 」

「行こう。幸」

クラスに入っても、クラスメートの冷ややかな眼差しは変わらなかった。

「はい、鏡」

いきなりクラスメートの女子の1人が幸の前に鏡を置いた。

「あんたんち、鏡ないんじゃないかと思って

さ」

恭子はクラスが違うので、此処にはいない。

「一辺鏡よく見たら?このドブス!」

それを機に周りが一斉に笑い出す。

幸は俯いて唇を噛み締めていた。


サッカー部の朝練を終えて、涼真がクラスに入って来た。

部活中も開口一番に幸との事を言われた。

「妹尾、お前趣味悪いな…… 」

「涼真、もう少しまともな子いなかったのか

よ」

もちろん涼真は黙っていない。

「彼女は優しい子だよ」

涼真がクラスに入ると、途端に陰口が止まる。

こうして幸も涼真も周りの目に晒される日々が待っていたのである。

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