第11話

校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下には、誰もいなかった。

幸は涼真を追いかけて来た。

涼真は振り返った。

「この間の返事を聞かせてほしい」

涼真は真剣そのものである。

「私なんか、妹尾君に全然似合いじゃない

し…… 」

幸は俯いている。

「どうして?」

涼真は静かに口を開いた。

「どうしてって!私……ブスでブタだし、妹尾君には私よりもっと素敵な人が…… 」

「それは俺が決める事だよね。他の人がなんて言おうと、俺には氷室が可愛く見える」

「…… 」

「俺が聞きたいのはそう言う事じゃなくてYESかNOかって事なんだけど」

涼真は少し怒っていた。

幸の瞳に涙が浮かぶ。

「本当に私なんかでいいの?」

「俺は氷室幸に言っているんだ」

幸はとうとう耐えられなくなって涙をポロポロ零し始めた。

その次の瞬間、涼真の唇がそっと幸の唇に触れた。

「君が好きだよ」

キスの後、涼真は優しく言った。

「私も……妹尾君が好き」

初めてのキスの驚きで、幸の口からその言葉が自然に零れていた。

涼真はゆっくりと幸の水風船のような身体を抱きしめた。

身長180cmの超イケメンの涼真と、152cmのデブでブスな幸。

2人の物語は此処から始まる。

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