第10話
朝の8時は、まだ学校には疎らしか生徒がいない。
屋上には誰もいなかった。
開が手摺に持たれて空を見上げていると、奈緒がやって来た。
「おはよう。朝からゴメンね」
「い、いや話って何?」
開は奈緒を見ながら言った。
奈緒は少し緊張している。
「あのね……福山君は誰か好きな人がいる
の?」
好きな人。
その言葉を聞いて同じ屋上で告白した時の事を思い出して、開は顔を顰めた。
高野さやかにやっとの想いで告白して玉砕したあの時の事を。
「まだ……高野さんの事を。そうだよね。そんなに簡単に気持ち変わる訳じゃないよね」
「え?」
開が何も言わない内に奈緒は何故か納得していた。
「早く……傷が癒えるといいね」
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