第11話

「馬鹿か?お前は……それは告られたのも同じじゃないか」

将真は呆れたように声を上げた。

「告るって……そんな事有り得ないよ」

「これだからなあ。で?誰なんだよ。相手は」

羽織と袴を身に付けた将真が言った。

やはりイケメンは違う。

何を着ても決まる。

「姫野奈緒だよ」

開が言うと将真はかなり驚いた顔をしていた。

「……びっくりした」

「だろう?」

「ちゃんと自分の心と向き合えよ」

将真は竹刀を持つと部室から出て行った。


将真が一瞬言葉に詰まった事に開は気付いていた。

素振りをする間も開は将真を見ていた。

「もっと気合いを入れて!」

先輩から言われて、開は真っ直ぐに前を向き気合いを入れ直した。

奈緒も凛とした眼差しで素振りを繰り返していた。


「俺な。姫に告白したんだ。でもダメやった。好きな人がいるって言われた。そん時はまさかお前や思うてなかったけどな」

「まさかそんな…… 」

開は信じられなくて首を振った。

「姫が想いを打ち明けなんだのは、お前がまだ高野を忘れられへんと思ったからや」

「そやけど…… 」

開が中々意思を示さないのに、将真は段々と腹が立って来た。

「姫野奈緒やで!あんな高野と比較になるかいな!」

「でも……やっぱり信じられないよ。俺なんかに」

「あー俺も信じられないよ!聞いてて苛々するわ!」

とうとう将真が声を上げた。

「服部…… 」

「姫を泣かすなよ。俺が言いたいのはそれだけだ」

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