第8話

日曜日はひたすら皿を洗っている。

最初はウェイターのバイトで採用されたのだが、客からクレームが来たのだ。

「あんなキモい男に運ばれたら食べる気なくするから変えて!」

女性客だった。

やっぱり、俺は女性には嫌われる。

それからすぐ開は洗い場に移された。

「お疲れ様。学園祭、めちゃ面白かった」

休憩室で休んでいたら、奈緒が入って来た。

「あの。笑わせる事しか出来へんから」

「素敵だったよ」

開は一瞬、奈緒が言った言葉が信じられなかった。

今、何て言ったんだ?

俺を素敵?

奈緒はロッカーを開けると、クッキーの入った袋を開に渡した。

「誕生日おめでとう。ゴメンね。何が好みか分からないから。クッキーで」

「な、何で俺の誕生日知ってるの?」

「笠井君に聞いたの」

「そ、そう…… 」

開はそのまま口籠った。

「あ、もしかしてクッキー好きじゃなかっ

た?」

奈緒の顔が少し曇った。

「い、いや好きだよ」

「良かった」

奈緒はホッとしたような表情を見せた。

開は袋を開けると、中からクッキーを取り出した。

「これ、ひょっとして手作り?」

「うん。口に合うかな」

開はドキドキしながらクッキーを食べた。

女の子から物を貰うなんて生まれて初めてだったからだ。

「どう?」

「美味しい!」

「良かった…… 」

奈緒は胸を撫で下ろした。

「俺なんかの為にありがとう」

「なんかじゃないわ。もっと自信持って」

奈緒はそのまま部屋から出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る