第3話
社長に報告する為に、麻紀は事務所に行った。ドアを開けた所に、一人のスーツ姿の青年がいて、危うく麻紀はぶつかりそうになった。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「私の方こそすみません」
青年は柔らかな笑顔で麻紀を見ている。
麻紀も青年を見つめていた。
「夏目麻紀さん?」
「どうして私の名前を……?」
青年はそれには答えなかった。
「初めまして。矢崎翔真のマネージャーで藍崎克哉と申します」
矢崎翔真⁈
麻紀は仰天してしまった。
矢崎翔真は超人気俳優で、テレビに映画に大活躍していた。
そんな売れっ子俳優のマネージャーが私のような無名の新人の事を知っていてくれた。
麻紀は胸が熱くなるのを感じていた。
「そうか。役がついたか」
社長はあっさりと言った。
「話はそれだけか?」
「はい」
「分かった。もういい」
社長はそれ以上何も言わなかったので、麻紀は部屋を出て行った。
劇団宝は宝プロに所属している。麻紀はその足で劇団宝に向かった。
稽古場に入ると、麻紀は他の団員と一緒に発声練習を行った。
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