第19話

そして最終グループの演技が始まった。

此処まで誰も瀬名の点数を抜いた者はいない。

第1滑走は日本のエース、白河愛弓である。

愛弓は現在19歳。

日本女子フィギュア界で彼女に勝てる者は居なかった。

既に全日本選手権に2連覇している。

今回の試合にも3連覇が掛かっていた。

曲は白鳥の湖である。

「私の白鳥の湖とはレベルが違うわ…… 」

隣で由里香が思わず呟いた。

「ジャンプはもちろんあのステップ」

速いのに優雅で上品な愛弓のステップに選手達は見惚れていた。

「私、愛弓さんのステップ凄く好きなの。私もいつか、あんなステップが踏めるようになりたい」

瀬名が演技が終わって満面の笑みを浮かべて観客に応えている愛弓を見ながら言った。

「私もいつか愛弓さんのようになりたい」

由里香が続いた。

「私、大友由里香。横浜なの。あなたは?」

「私は立原瀬名。東京なの」

「宜しく」

「こちらこそ」

瀬名と由里香はそう言うと、お互いに笑顔になった。

そして演技は続き、瀬名は4位、由里香は7位になった。

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