第5話

全日本ジュニア選手権は、今年は千葉で行われた。

響は幸いにも他の観客から離れた場所に叔父一家と一緒に座っていた。

真野はその隣に座ってガードしている。

今日は女子のフリースケーティングである。

フィギュアスケートの男女シングルには2分40秒のショートプログラムと4分間のフリースケーティングがある。

ジュニアのフリーはシニアよりも30秒時間が短かった。


「26番立原瀬名さん、あさひスケートクラブ」

アナウンスが流れて、瀬名はリンクの中央に滑り出して来た。

瀬名は母親の手作り衣装に身を包んで開始の時を待っていた。

曲が流れ始めた。

夜想曲のメロディが流れて、瀬名はゆっくり滑り始めた。

柔らかなスケーティングを見せると、そのままトリプルルッツを跳んだ。

そしてフライングシットスピンを見せ、優しい曲の世界に観客を引き込んで行った。

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