第6話

響もいつの間にか、真剣な表情で演技を見ていた。

ダブルアクセルを決め、最後はステップで会場を包み込み、フィニッシュになった。

「立原瀬名さんの演技でした」

拍手を受けながら、瀬名は観客席に向かって腰を屈めて挨拶した。

「立原瀬名か…… 」

響は思わず呟いた。

従姉妹の演技はその3番先だった。

叔父は"ファイト!大友由里香"と書かれた垂れ幕を掲げている。

由里香の曲はくるみ割り人形である。

由里香のフリーの演技が始まった。


「良かったよ。由里香また演技上手くなってるよ」

響がそう言うと、叔父の顔が緩んだ。

「ごめんなさい。俺もう行かないといけないんだ」

「そうか。忙しいんだな」

「じゃあ」

響は真野と一緒に観客席から離れた。

そしてそのまま会場を後にした。

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