第24話

みどり総合病院の救命センターに一人の若い男性が運ばれて来た。

交通事故で、左腕で庇ったらしく、左腕が複雑骨折していた。

遙は研修医として手術に立ち会った。

それが悠との出会いだった。

遙は悠の主治医になった。


「悠!幾らリハビリをしても、もうバイオリンは弾けないって先生、仰ったの!だからもう無理はしないで!」

もうリハビリの時間は終わっているのに、懸命に腕のリハビリをしている悠を見て、母親は泣き叫んだ。

其処へ遙が入って来て、悠の背中を羽交い締めにした。

「もう止めなさい!やり過ぎはダメ!

聞きなさい!あなたは腕の神経が切れてもう繊細な動きは出来ないの!」

そして遙は前に廻って、悠の両目をしっかりと見つめた。

「幾らリハビリしても、もうバイオリンは弾けないの」

悠に言い聞かせるように、遙はずっと悠の目を見ていた。

悠はその場で泣き崩れた。

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