第3話
都内にあるみどり総合病院救命救急センターは、24時間患者が尽きる事はなかった。
今も突然自宅で倒れ、心肺停止の男性が運ばれて来た。
遙は男性の心臓マッサージを繰り返している。
看護師達が遙の指示で忙しく動き回っていた。
「笹倉先生は今、処置中ですので」
看護師に言われて、悠は救命センターから少し離れた長椅子に座っていた。
遙が白衣をなびかせながら、廊下を走って来たのはそれから30分後だった。
「お待たせ……!」
遙は息を切らせている。
「患者さんは助かったみたいだな」
「何とかね」
遙は悠の手を引いて、ドアを開けて外に出るといきなり抱きついた。
笹倉遙は27歳。
みどり総合病院の整形外科医である。
今は救急当番で救命センターにいた。
「逢いたかった…… 」
悠もしっかりと遙を抱きしめていた。
「僕もだよ。遙」
お互いに目を閉じて、それぞれの想いが流れるのに任せていた。
背中に回した遙の左手首に金色のブレスレットが光っている。
「ねえ、悠…… 」
遙が口を開きかけた時、遙のPHSが鳴った。
「はい、笹倉です」
『笹倉先生、29歳男性、交通事故でまもなく到着します』
看護師の声を聞いて、遙の顔が一気に締まった。
「分かった。すぐに行くわ」
そして悠の方を向いた。
「悠、ごめんね。行かなきゃいけないの。また連絡するから」
「ああ、しっかり。笹倉先生」
遙はドアを開けると、廊下を歩き出した。
その表情は凛としていて、もうすっかり医師のものになっていた。
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