第43話

1月3日の朝、芦ノ湖からまずは往路1位の高岡学院大学が大手町に向かって走って行った。続いて2分30秒後に2位の横島大学。そして2分32秒後に明和大学が出発した。

6区を走るのは4年生の山本である。

小涌園前が一番応援が賑わう所だ。

朝早い時間にも関わらず大勢の人の声援が選手を後押しした。

6区は山下りである。

一気に山を下るので、平地になる残り3㎞は登っているような感覚になった。

そして待っているのは7区の浅野である。4年生で初の箱根駅伝だった。

浅野は残念ながら2人抜かれてしまった。5位で8区の友野に襷を繋いだ。

友野は3年生である。

去年、歩希の代わりに9区を走って2人を抜いた実績がある。だが今回は抜く所迄は出来なかった。


歩希は、戸塚中継所で友野が来るのを待っていた。

「篤史、ラスト!」

歩希は必死に走って来た友野から襷を受け取ると、友野の背中をポンと叩いて鶴見中継所に向かって走り出した。

沿道には沢山の人が出て応援している。その中に父親と母親の姿もある。

そう思いながら歩希は走っていた。

前の選手が見えて歩希は1人抜いた。

「今、順位が変わりました!明和大学の宮本が山田大学の石井を抜き、順位を4位に上げました!」

横浜駅の近くで歩希は友人の早瀬から給水を受けた。

「頑張れ!歩希!」

歩希は水を飲んだ後、早瀬に笑顔で答えて走り去って行った。

鶴見中継所近くになり、池野大学の選手の姿が大きくなって歩希はスパートをかけて抜いて行った。

そして3位でアンカーの岡島に襷を繋いだ。

岡島はキャプテンである。

こうして岡島は3位をキープして、ゴールテープを切ったのである。

明和大学はベスト3に入った。

選手達はみんな光り輝いていた。

走った10人は勿論、監督も3人のマネージャーも喜びに満ち溢れていた。

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