第13話
俺には高校時代、彼女がいた。
陸上をやりたくて神戸英明高校に入学した。
そこの藤沢監督に「君は長距離向きだ」と言われ、長距離に転向した。
それまで俺は400mの選手だった。
だが、練習してもタイムが伸びず悩んでいたのだ。
長距離向けの練習を始め、最初は戸惑う事だらけだった。
短距離のトレーニングの加速走、ウェーブ走、ピラミッド走からタイムトライアル、坂道ダッシュとは全く違う練習になったからである。
そんな時に彼女、平沢沙織が告白して来た。
彼女は欲しかったし、沙織が中学時代陸上をやっていたと知り、付き合う事にした。
元陸上部の子なら練習の厳しさも重要性も分かり、話も通じると思ったのだ。
だが、付き合ってみると彼女は中学1年生の時に先輩との上下関係が嫌で止めていた事が分かった。同じ中学の子によると、練習嫌いでサボりがちだったのを注意した所止めたそうだ。
歩希はガッカリしたが、向き不向きがあると思い、沙織との交際は続けた。
デートは日曜日のみの約束も守っていたし、代わりにデートは全て沙織に合わせていた。
所が試合前に日曜日の練習があると、沙織は途端に機嫌が悪くなった。
「お前も陸上部にいたなら分かるよな」
「私、試合に出た事なんかないもん!」
「とにかく試合が近いから練習は休めないんだよ。分かってくれよ」
試合のために、沙織を宥めるのに正直疲れていた。
それでも2年生の7月までは付き合った。
「私と陸上とどっちが大事なの!」
試合前でデートが出来なくなった時にとうとう沙織は言った。
「陸上だよ」
そう言った瞬間に頰を叩かれていた。
こうして俺の恋は終わった。
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