第14話

その話を阿部にしたら笑われた。

「よく1年も付き合ったな」

「それはやっぱ好きだったし……いつかは分かってくれると思ったから」

歩希は寂しそうに言った。

「俺が陸上が全てだと分かってくれる子じゃないと俺ならいらない」

阿部はキッパリと言った。

「だから高校の時は彼女無しでひたすら記録更新ばかり考えていた。大学に入ってすぐに好きな子が出来て付き合い出したけどな」

「でも陸上部じゃないよな?」

「彼女は俺の応援をしてくれる」

阿部は少しボカした言い方をした。

同じ陸上部の女子かもしれない。

表立っては言えないのだろう。

「そうか」

「大学に入ってからはいないのか?」

阿部はそう言って歩希の目を見た。

「いないよ」

歩希は咲香への想いを誰にも打ち明けてはいない。

自分の胸の中に秘めていた。

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