第1章 繋げなかった襷

第4話

明和大学陸上部は伝統ある歴史を持つ。

箱根駅伝も15年連続出場だ。

箱根駅伝では10位以内の大学にはシード権が与えられる。それ以下になると厳しい予選会を突破しなければならない。

歩希は明和大学陸上部のエースだった小峰達也に憧れていた。

小峰は1年生から2区を任されられ、区間賞も獲得している。

小峰さんのようになりたい。

小峰さんのように箱根で走りたい。

だから歩希は明和大学に進学を決めた。


歩希は1年生で復路7区を任されられた。

だが現在、アクシデントがあり既に20位を走っている。

復路ではトップとの差が20分を過ぎると繰上げ襷が掛けられ、伝統の大学の襷を繋ぐ事は出来なかった。

6区を走った3年生、橋田は途中で右足首を痛めて脂汗が流れている。

それでも襷を繋ぐため、必死に走って来た。

先輩、ありがとうございます。

歩希はよろけながら必死に走る橋田に大きく手を振った。

先輩が必死に繋いだ襷……

俺が必ず繋ぎます。

歩希は橋田から襷を受け取ると真っ直ぐに前を向いて走り始めた。

橋田はその場に倒れ込んだ。

濃紺のユニフォームにしっかりと掛けられたのは水色の襷。白のラインが入っていて濃紺で明和大学と記載がある。

この襷の裏側には22名の選手達全員の名前と監督、3人のマネージャーの名前がしっかりと刻まれている。

何としても何としても……

この襷を次の走者に繋がなければならない。

歩希は必死になって走った。

沿道には多くの人達が並んで大声援を送っている。

各大学の幟も見える。

この襷を繋ぐ……!

歩希の頭の中はその事だけであった。

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