第6話

優しい音楽に包まれながら静香はゆっくりとコーヒーを飲んでいた。

春風高校から徒歩5分の所にある喫茶店,スノーホワイトの中はカウンターも6つあるテーブル席も柔らかな陽射しに包まれている。

夕方5時過ぎ、オレンジ色の陽射しが包み込む店内で静香はコーヒーのお代わりを頼もうとした。

だがその時、静香の手はカバンの中から取り出した小銭入れを開けた所で止まってしまった。

お金が足りない。

静香はその時,自分がコーヒー一杯分のお金しか持って来てない事に気がついた。

もう少し居たかったな……

諦めて空になったカップを受け皿に置くと静香は席から立ち上がろうとした。

その時、1人の少年が静香のカップにガラスポットに入っていたコーヒーをゆっくり注いだ。

白いシャツに黒いズボンを履き、

黒いエプロンをしている。バイトだろうか。

「あ,あの……」

「これ,もう入れ替えないといけないから飲んでくれると助かる」

バイトの少年はそう言うと静香を見た。

「どうぞごゆっくり」

少年は柔らかく笑った。

その笑顔はまるで春の柔らかな陽射しに包まれるように優しい。

静香はその笑顔に釘付けになっていた。

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