第5話

高校に入っても静香の周りには新しい風はまだ吹いてはいない。

制服は変わっても学校は変わってもやっぱり私は私。

根暗な所も上手く話せない所も何も変わっていない。

高校生といえば青春真っ盛りなのに、青春ってなんだろって……

そんな事を考えながらコーヒーを飲んでいた静香の周りを優しいBGMが柔らかく包み込む。放課後の喫茶店の中は他に客の姿もなく、窓から差し込む春の淡い陽射しだけが静香を照らしていた。暖かい春の柔らかな空気を感じながら白いカップを包み込む。

暖かい……

静香の瞳に涙が浮かぶ。

不思議。何も言われていないのに慰めてくれてるみたい。

マスターがサイフォンでコーヒーを淹れているのをぼんやりと見ながら静香はゆっくりと目を閉じた。

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