白金君は強かった!?

「森宮さんの行動が、言葉が、僕に迷惑でしかなくて、僕ではない誰かにカツアゲされるきっかけを与えていることが分かりませんか?」

無表情に、丁寧に、周囲に響きわたる声。


「ひぃ!ごめんなさい」

反射的に、森宮は答えた様に見えた。

「そうやって自分を小さく見せて、同情を誘いたいなら他でやって下さい」

捩じ込まれたお札を、森宮の胸ポケットに捻じ込み返した。


「白金君はカツアゲしたの?してないの?」

「してないんじゃね。だって文武両道、品行方正が身体に張り付いてるような奴だぜ」

「でも、ヤクザの…」

また、周りがざわつく。


「私は誓います。白金組が、皆さんや皆さんのご家族に危害を加えるような事をした場合、その者は絶対に許さないと」

誰の顔を見るでも無く、静かに、丁寧に言った。


(ここじゃ!)

「あの!」

(石ころで居たかったけんど…)


周囲の視線が、喧嘩に集まった瞬間だった。


白金は森宮の耳元で囁く。

「善意で助けたわけじゃありません。森宮宮司のご子息だから助けた?いや、森宮潔彦さんの策に乗ったんです」

それを聞いた森宮は、雰囲気が変わった。


(やばい。やばい。人前で話をするって、こんな緊張するものなんやか。足が震えて来て、声が思うように出んべさ)

喧嘩は、慣れない事はするものじゃないと、そして、注目されても喋べれる白金の凄さを感じた。


そんな喧嘩を横目に、先程のか細い声は何処にやらで、森宮も周囲に響き渡る声を発した。

「善意じゃない。善意じゃないなら、お礼はしません。私の勘違いのようで白金さん」


周囲が喧嘩から目線を外し、森宮と白金を見た時には、森宮はもう教室を出て行く所だった。


「え?」

「けっきょく…」


予鈴が鳴る。

よく分からないままの雰囲気は、強引に流れ、周囲の人々は、各々の先に戻って行く。

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