2度目は無いと言いましたよ!?
(白金町に住んで14年。初めてみただ。思わず動画を撮ってしまっただ)
クラス後方の窓際に座る白金を、あからさまにチラチラと見ずにはいられなかった。
(じゅ、銃撃戦というやつだべさ?白金町で何が起こってるべさ?あー。あー。聞きたいことが山ほどあるけんど…)
「聞いてもー」
「何をですか?」
思わず出た喧嘩の独り言に、返事があった。
喧嘩は、返事があった方向を向く。
目の前に、いつの間にか白金がいる。
「目の下。凄いクマですね」
喧嘩と同じ目線までしゃがんだ白金は、親指でそっと、喧嘩の目の下を撫でる。
(近いだー)
また、顔を真っ赤にする喧嘩。
この前も今もだが、白金には普通の人の距離感がないように思えた。
「興奮して眠れませんでしたか?それとも、恐がってですか?」
喧嘩の鼻と白金の鼻が、ぶつかりそうなほどの近さで、目線を合わせ言われる。
(ばれとる!)
喧嘩は思わず席を立ち、白金の指からは逃げたが、目線は外せなかった。
たまにある、白金が出す空気。
何を考えてるから分からない表情と目線に絡めとられると、逃げられない。
「これ喧嘩さんですよね」
白金家の塀によじ登り、カメラを構える喧嘩の姿が映っていた。
「不法侵入ですね」
(あれじゃ。興奮のあまりよく見ようとしたら…)
と、言い訳を考えるが言葉にはならなかった。
「危ないですね。流れ弾にあたってたかもしれませんよ。銃弾の玉って取るの大変って、知ってますか?」
(やっぱり銃撃戦だったん!?)
あの時は、初めて見る光景に、好きな俳優がドラマの撮影をしている現場を目にしたような興奮しかなかった。
しかし、白金から言葉にされると、今頃になってじわじわと恐ろしさが、喧嘩の心に広がる。
「もう撮らないでと言ったのは喧嘩さんの為を思ってなのに…
これが大変な事件の証拠になるって自覚ありますか?」
(なんの自覚だべ?)
白金の言葉は、喧嘩にはさっぱり理解出来ずにいた。
その理解していないが張り付いた顔を見ながら、後退りした喧嘩の耳元に白金は囁く。
「殺人事件の現場です」
(さ、殺人!?)
思ってもみなかったが、確かにそうだ。
初めて聞く銃の音。人々の怒鳴り声。車の衝突音。
他の事に気を取られ、この映像の根本を理解していなかった。
これは、白金が殺されそうになっていた所を警察が助けた映像なのだと自覚した。
喧嘩の顔が青ざめる。
「なので、今日の放課後は空けておいて下さい」
そう言うと、白金は自分の席に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます