銃撃戦
白金中学校の正門に、黒塗りの車が停まる。
長身で体格の良い男が助手席から素早く出て、後部座席のドアを開けた。
「正矢さん。シャツにシワが!何かありましたか?」
「高崎。心配せんでええ。中で話す」
素早く後部座席に乗り込む。
「…はい」
静かにドアを閉めると、高崎も助手席に戻り車が発進する。
白金町では幼稚園の頃から見る光景だ。
「この3人を見つけだせ。金が欲しいらしい」
無表情に窓の外を眺めながら、校舎裏で会った3人の写真を高崎に渡す。
「分かりました」
高崎は、写真をスーツの胸ポケットへ入れた。
長くて高い塀が見えてくる。
何台もの車が両脇に路駐され、中には強面の男達が乗っている。
また、無表情に何台かの車を眺める正矢。
「じっちゃんの具合は、どうやった?」
いつもより車が多いのに気づいた正矢は、高崎に質問する。
「調子…悪いようです」
「そうかー。忙しくなりそうやなぁ」
深く溜息をつく正矢。
車が止まり、後部座席のドアが空いた瞬間だった。
「死ねやー。正矢」
猛スピードで車が走ってくる。
中からは男達が、正矢めがけて銃を発砲してきた。
「正矢さん中へ」
高崎は、後部座席から出てこようとした正矢を押し戻そうとした。
「たかが三下に慌てるなや」
高崎の手を掴む。
そして、静かに、しかし怒りを含んだ声で、無表情に高崎を見つめた。
(まだ14歳やのに。どんな人生を歩めばこの雰囲気や目になるのだろう…)
高崎は心で呟き、全身に寒気を覚えた。
それも、瞬間の出来事だった。
「警察です。発砲を止めなさい。でないと、こちらも発砲します」
さきほど正矢が眺めていた車が、猛スピードで走ってきた車の前に立ちはだかる。
運転席の男が急ブレーキをかけた。
が、激突しボンネットが半分ほど大破する。
前に立ちはだかった車は、少し後ろにずれただけだった。この事態に用意されたかのよいうに見えた。
「死んだかー?」
激突された車の後ろから、高崎に負けず劣らずの男が出てくる。
「氷室警部。簡単に殺さないで下さい」
「こんなんで死ぬか。ボケー」
中にいた男達が、また発砲しようとした瞬間。
ガシャーーーン
窓ガラスの割れる音と、6発の銃声に似た音が辺りに響く。
煙の出た車を取り囲む男達。
助手席の隣には正矢がいた。
手にはプロテクターをつけ、助手席の窓を破壊し至近距離で撃っていた。
「それは?」
「護身用のエアーガンです」
初めて正矢が笑顔を見せた。
「エアーガンねぇ…。約束は守れよ。クソがき」
「分かってます。守って頂き、有難う御座います」
窓ガラスから手を引き抜き、礼儀正しくお辞儀をする。
「俺は仕事しただけだー。後片付け宜しくー」
氷室警部と呼ばれた男は、車に乗り去って行く。
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