ヤクザな白金君の観察日記
@yyunsuke
喧嘩!?
「今月さー。ちょっと遊ぶ金足りないんだよなー」
体育館裏の雑木林で、3人の上級生に囲まれた1人の男の子がいた。
「も、持ってません」
怯える瞳で、声を絞り出す。
「んじゃぁ、裸になってみよーか」
1人の男が第一ボタンに手をかける。
そんな光景を見てる男の子がいた。
「これは、これは。白金組(しろがね)の坊ちゃんじゃないですか」
ボタンに手をかけていた男が、坊ちゃんと読んだ男の子に近づく。
「人身売買で儲けてるって本当っすか?」
男の子の左手を押さえていた男が、にやついた目線で言う。
「俺らにも、甘い汁吸わせて下さいよ」
今度は、右手を抑えていた男も、にやついた目線で言う。
「今時、かっこ悪いですね。お金が欲しいなら働いて下さい」
近づいてきた上級生の男を、無表情に見ていた。
「あぁ。なんだとコラァー」
睨みをきかした目線で、坊ちゃんと呼ばれた男の子の胸ぐらを強く掴んだ。
普通だったら、息が出来なくなりそうなほど強く。
「やめてくれませんか。シワになると心配されるんで」
掴まれたシャツを見ながら、少しだけ眉間にシワがよる。
「うるせぇー。出すもの出せやコラァー」
シャツを掴んでない手で、殴りかかった上級生。
一瞬だった。坊ちゃんと呼ばれた白金正矢(しろがねまさや)は、殴りかかってきた上級生の男の一歩右側にしゃがみこんだ。
勢い余った拳は、体育館の壁に激突した。
声は発しなかったが、そうとうな痛みを堪えてるのが分かった。
「こいつ!やりやがったな!」
怯えてる瞳の男の子の右手を掴んでいた上級生が、白金に向かって走り出す。
白金は立ち上がると、近くにあった大きな石を、向かってくる男の前にタイミングよく置く。
向かって来た男は、まだ拳を痛がっている男とぶつかる。
2人は勢いよく頭と頭をぶつけ、そのまま地面に倒れ意識を失った。
「まだ、やりますか?」
白金が無表情に、男の子の左手を掴んでいる男に目線をやる。
男は青ざめた。
「二度とやらないで下さいね」
抑揚の無い言葉なのに、周囲が凍りつく空気に包まれた。
倒れている男2人にかけより、2人を揺り起こす。
少しでも早く、この場を立ち去りたいかのように見えた。
「あ。脳しんとう起こしてるかもしれません。このまま死んじゃってもいいなら揺らして下さい」
また、無表情でさらりと怖いこと言いながら歩き出す。
「撮らないで下さいって言いましたよね。桐島喧嘩(きりしまけんか)さん」
そこには、一部始終を物陰から見ながら、カメラを抱えた女の子がいた。
「いやー。かっこよかったもので…」
桐島喧嘩と呼ばれた女の子は、正矢の目線から自分の目線を外す。
正矢は喧嘩に近づく。
喧嘩は後ろに後退りして、体育館の壁に背中がついた。
「悪用されたら困るんです。責任とれますか?それに写真を撮ってる暇があるなら、先生を呼んでくるのが常識でわ?」
正矢は逃がさないとばかりに、喧嘩の長い髪を耳にかけ囁く。
(ぎゃーぎゃー。耳にい、息がかかってるべさ)
と、喧嘩は顔を真っ赤にしながら心中で呟く。
その隙にカメラを奪われ写真を消されてしまう。
写真を消すと、正矢はカメラを返し喧嘩から離れ歩き出す。
「もう2度と撮らないで下さい。じゃないと、餌食にしますよ」
12頭身はあるのではという、後姿を見ながら喧嘩は思った。
(甘いんじゃ。データのバックアップをしてない、喧嘩様じゃないわい)
顔を真っ赤にしながらも、不適な笑みを浮かべ、インスターに写真をアップした。
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