第13話

翌日は女子のショートプログラムである。

陽乃は2回目の全日本選手権である。

今年シニアに上がった。

陽乃はグランプリシリーズのスケートアメリカは3位表彰台だったがフランス大会が転倒の影響で6位だったため、グランプリファイナルには進めなかった。

悔しさを全日本にぶつけようとやって来たのである。

「優奈ー!」

そこには去年全日本ジュニアで2位だった服部優奈がいた。

「陽乃ー!元気だった?」

2人は抱き合って喜びを分かち合う。

抽選の結果、陽乃は第4グループの3番滑走だった。

優奈は第4グループの5番滑走である。

陽乃のショートの曲は白鳥の湖だ。

美しく白鳥が羽ばたくようなスケーティングからルッツ、トウループの3回転連続ジャンプを跳び、会場が拍手に包まれる。そのままステップをこなし、ダブルアクセルを跳び、最後はビールマンスピンでフィニッシュを飾った。

温かな拍手を受けながら、陽乃は笑顔で観客に挨拶した後、手を振った。

そして氷上を彩る花を拾ってリンクサイドに向かった。

コーチは凪と同じ山野である。

キスアンドクライで点数を待っている間、陽乃の心臓はうるさいぐらいの音を立てていた。

68.52。

何とか最終グループ入りは果たせたか。

陽乃はホッと息を吐き出した。

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