第11話

全日本選手権は国内最高の大会である。

毎年12月のクリスマスの前後に開催された。

凪は14歳で全日本選手権にデビューである。

11月に開かれた全日本ジュニア選手権で凪は4位になったため、全日本選手権に推薦されたのである。

凪の出番は第1グループの第1滑走だった。

滑走順は抽選で決まる。

満場の観客の見守る中、凪はリンクに立った。

曲目はオペラ座の怪人である。

黒と白のコンビの衣装に身を包んでいる凪だが、まだ幼さも感じられる可愛い顔だった。

シニアには4回転をつける事が出来る。

凪はいきなり4回転フリップを跳んだ。観客達から歓声が上がる。

次はトリプルアクセル……

凪はキレのある動きで観客を惹きつけていた。

フライングキャメルスピン、流れるようなスケーティングの後、コンビネーションジャンプを披露して、後は軽やかな足取りでステップを踏んだ。

曲が終わり、最後のポーズを決めると

会場から割れるような拍手と歓声が上がった。

凪は会場の四方向にいる観客に挨拶をすると、リンクサイドに向かって滑って行った。

リンクサイドで待っていた山野コーチと抱き合う。

そして黒いジャンバーを羽織ってコーチと一緒にキスアンドクライに座った。

向けられたカメラに向かって笑顔を見せる。

そして得点が発表された。

79.56。

高い点数に会場がどよめき、拍手の雨が降って来た。

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