第10話

土曜日がやって来た。

食卓の上には肉じゃが、焼き魚、だし巻き卵、わかめと豆腐の味噌汁が湯気を立てている。

そうしていると玄関のチャイムが鳴った。

「こんばんは」

時間ぴったりである。

「これ、皆さんで」

俊介が手渡した紙袋にはプリンが入っていた。

「ありがとう!入って」

そして俊介は陽乃に連れられて台所に入って行った。

「父さん、彼が私の恋人の日高俊介君。一緒にスケートをしているの」

「初めまして。日高俊介です。陽乃さんとお付き合いしています」

俊介はやや緊張している。

「陽乃の父親です。娘がお世話になっていま

す。何もありませんがどうぞ」

こうして食卓に父親、凪、陽乃、俊介が向かい合って座った。

「頂きます」

父親が言って挨拶した後、食事が始まった。

「美味しい!」

「良かった!」

陽乃が胸を撫で下ろす。

「俊介君はお家は何をしているの?」

「レストランです。午後9時迄やってるの

で…… 」

「それは大変だな」

「近くに残業している会社が多いのでその人達が食べに来るのでその時間まで」

「じゃあ晩御飯はスケートセンターで食べるのかい?」

「はい。その方が仲間と食べられますし、母がセンターにお弁当を届けてくれるので僕は学校から直接センターに行きます」

「そう」

「これからは時々ウチに食べに来ればいい。土曜日とかにね」

「有難う御座います!」

俊介がお礼を言った。

「父さん、ありがとう」

陽乃の顔も喜びに満ち溢れている。

俊介は父親に気に入られたのだ。

「君の事は凪からよく聞いていたよ。勉強を教えてくれたり、相談に乗ってくれたりしたそうだね」

「僕には兄弟がいませんから」

「だから父さん、俊介さんは俺の事弟みたいに可愛がってくれるんだ」

「それはありがとう」

父親は柔らかな笑顔を見せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る