第3話

「すみません、そこをなんとか・・・」

ブックポストに返却をしたあとで、続編物の小説を借りようと決めて、きっと読み切れて少し物足りないくらいの5冊を手に取って。

カウンターに着いた時のことだった。


スラッとした、でもきっと筋肉質な雰囲気のする男性で、本を2冊手にしていた。

「えぇ、ですが市内在住または在勤の方、という規定がありますし・・・」

図書館司書の女性も、例外を作れば自分の責任になってしまうし、困惑するのも当然だ。

「あの、また何日かおきにこちらに来る予定があるんです。だから、返却は必ずしますから」

何やら男性は必死なんだけれど、うんと言えない司書の女性。

「あの、すみません」

このやり取りに決着が付かなければ、私は本を借りられないし、時間が勿体ない。

「私が彼の代わりに借ります。例えば彼が借りパクしちゃったんなら、私が弁償しますから」

と、自分の本の上に貸し出しカードを置いた。

「あら、いつかさん。おはようございます」

「おはようございます。持田さんも困っちゃうよね、規定を破る訳にいかないし。だから私が保証人代わりに借ります。それでいいですか?」

と尋ねる為に、初めて男性の顔を見た。

「・・・え・・・」

絶句してしまった。

「はい、あの、そうしてくれると凄く助かります!この本、ずっと探してたんですけど、絶版だし、ネットでも買えないし・・・」

「いつかさんのお申し出でもありますし・・・貸し出し処理しておきます。ただし、いつかさんにご迷惑が掛からないように、きちんとご返却くださいね?」

「はいっ!ありがとうございます!!」

貸し出し処理をしている最中も、私は呆然としてしまった。

どうして彼が・・・ここに・・・?

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