第14話 侵入者

 次に着いたところは、自分の家だった。


 恐るおそる入ると、台所にかけてあるカレンダーも、リビングに置いていた新聞も、今日出た時のままだった。


 俺はホッとして自分の部屋に入り、唖然とした。


 なぜなら出かけた時と室内が、まるで違っていたからだ。


「母さん、おれの部屋入った?」

「はぁ?何を言っているのよ。母さんが入るわけないでしょ。何がどうしたの」


 そう言いながら、おれの部屋までやって来た母は、俺と一緒に部屋の前で立ち尽くした。


「何よこれ」

「母さんじゃないなら、泥棒かなにか?」

「もう何呑気な事を言ってるのよ。大変なことになってるじゃないの。

 電話電話!母さんは警察に電話してくるから。

 無くなったものとか無いか、確かめて」


 母はそう言いながら、キッチンに向かって階段を降りて行った。


 俺は、再び自分の部屋を、見つめる。


 俺はあまり綺麗好きではない。ないが……これはちょっと違うよな。


 乱雑にばらまかれた部屋の中に、人が何人か土足で歩き回ったような跡が、そこかしこにあった。


 部屋のAIは、停止しているようで、今のところ何の反応もない。


「データ確認して、修理か?とりあえず片付けだな……」


 俺は、ため息をつくと、頭をかいた。


 母さんは確認するようにって、言っていたけど……

 確か被害状況とかの確認で、現場保存とかがあったよな。

 ……取り敢えず待つか。


「……」


 それにしても、なんだってこんなことに?


 別に取るようなものなんて、無いと思うけどなぁ……


 まあでも、下にいた母さんに、被害がなくてよかったよ。


 間もなく、サイレンのけたたましい音が、家の前で止まった。


 やってきた警察の人が、指紋や足跡の採取をしたり、紛失や破損等がないか、一緒に室内を確認して回ったりした。


 結果、部屋は荒らされていたけれど、無くなったものは無く、壊れたものも無かったが、一応被害届は出した。


 まあ後片付けは、かなり大変だったことは、ここに記しておこう。


 久しぶりの大掃除で、いらないものの増えつつあった俺の部屋が、すっかり綺麗になったことは、悪く無かったのかも。


 うん、前向きにとらえよう。


 問題は目的だな、何で俺の部屋だけなんだ?


 物取りなら、家中全部を物色して、金品とか盗んでいくんじゃないのか?


 ドラマとかでよくあるあれ、空き巣だ。


 いやこの場合、母さんが下にいたから、居る巣になるのか?強盗?


 でも入ったのは俺のへやだけ、しかも2階、どこから入ったんだ?


 奇妙な話だ、2階に直接入るには、梯子でもかけなければ入れないし、かなりの確率で目立つだろう。


 隣の人は、物音すら気づかなかったという。


 だからといって、仮に俺が自分でやるにしても、手がこみ過ぎだと言わざるを得ない。


 俗に言う、自作自演というやつだ、いや、やらないから。


 何がどうあれ俺自身、あるいは俺の持っているであろう何かを、探しているのは明らからだ。


 いったい、何を探しているんだ?


 今回、部屋に侵入した人達は、おそらく例のモノクロな人達だろう。


 彼らなら、入った痕跡など残るとは思えない。


 ということは、警告なんだろう。


 未来の世界の博士に聞いた、俺がこれから発明するであろう何かを、もしくはそれをつくるのに必要なもの、材料を探しているってことか?


 どれの事だろう?


 いろいろ考えてはいるが、そこまで欲しがるものなんて、あったっけ?


 などと、呑気に考えていた俺は、すぐさま後悔した。


 敵はもう、猶予を与えてなど、くれていなかったんだ。


 見つからない以上、俺の存在を消すことに、重点を変えていた。


 だからもう、なりふり構わず襲ってきたのだ。

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