第7話 俺だけが知らない

 意味が分からない。


 一体何から守るというのだろうか。


 それに、私達と言った。


 ということはだ、彼女の他にもまだ、仲間がいるということになる。

 

 ……やはり下手に逆らっても、多勢に無勢、俺一人に勝ち目など、無いではないか。


 まあ謎が気になることはあっても、逆らう理由はないが……


「理由は言えませんが……

 私達は危害を加えるために、あなたに近づいた訳ではありません。

 むしろ、危険な組織から、あなたを守るために来ました。

 本来なら、あなた自身にも気づかれないまま、事を終わらせる予定だったのですが、……申し訳ありません」


 危険な組織?なんて胡散臭い。


 危険な目なら、常々自ら招いている。


 実験に失敗して何度、破壊したことか……今では防護服は、俺の必需品である。


 夏は暑いので結構困る。何かそれに代わるものを考えてはいるが、まだ少しかかりそう……って、また考えがそれてきたな。


 危険な組織ねぇ……


 実感が湧かなさすぎて、三田村がひたすら熱く語るペット愛(爬虫類限定)についての話並みに、興味が持てない。


 しかし、そんな怪しそうな組織と知り合った覚えはないし、仮にそんなフィクションのような組織があったとして、目をつけられるようなことを、した覚えもないと思うけど……


 誰かと間違ってやしないだろうか?


「本当に俺のこと?身に覚えがないんですけど……」


「航起さんですよね?渡来航起さん!間違いありません。

 これからよろしくお願いします。」


 彼女は、凛とした態度で、軽く頭を下げた。


 俺もつられるように、慌てて頭を下げた。


「こ……こちらこそよろしくお願いします?」


 結局、俺であるという確たる証拠を、示してもらった訳ではないが、彼女の雰囲気に呑まれって、つい受け入れていた。


 変な話、女の子に守られる俺って、かなり情けないよな。


 そう思う一方で、彼女の話が真実起こることなら、一体どんな連中が狙っているのか……


 考えただけで、薄ら寒くなった。


「では私はこれで失礼します。他の人員が監視いえ警護をしていますので、安心してください。それじゃあ、また明日学校でね。航起くん」


 彼女は俺に、にっこり微笑むと大きく手を振り、人ごみに中に消えていった。


 後に残された俺は、さっきまでのやり取りが、本当のことだったのか、ただの幻覚だったのか、掴みかねていた。


 ただこの胡散臭い話を、信じてもいいと思えるくらいは、彼女に惹かれていたんだ。

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