第6話 タイムマシン論1
タイムマシンに乗ってあの日あの時に戻ろう。後悔せぬように。愛の言葉を携えて。
誰にもあるそんな瞬間に戻れたら。
今回はこのタイムマシンについて述べよう。
タイムマシンほど口にすると人に馬鹿にされる機械はない。
「タイムマシンはあり得ない」愚か者は鼻を膨らませながら断言する。「その証拠に俺は見たことがない。未来人が街のど真ん中に現れたなんて聞いたことがないだろう」
そう言ってからどうだ俺は賢いだろうとドヤ顔をする。
まさに短慮ここに極まれりである。
我々が本物の未来人に遭えない理由は百も考えられる。
曰く、タイムマシンは受信機を必要とする。
曰く、最小時間跳躍単位が百億年である。
曰く、一人の人間を一年過去に送り込むのに標準的黄色恒星一つ分のエネルギーを必要とする。
実際には素粒子の世界で科学者たちは時間を遡る現象を見つけている。
それがE・R・P(アインシュタイン=ポドルスキー=ローゼン)現象である。
光子を放射するとき、双子光子を作ることができる。生成された二つの光子はエンタングル(絡み合い)状態にあり、一方の光子の偏向状態を固定するともう一方の偏向状態も決定される。
この変化の伝播は光速の壁を無視して行われる。量子テレポテーションと呼ばれる現象である。
問題はこの変更状態が固定されたのが未来の時点でも、過去の時点での状態に影響が出るということだ。
つまり未来から過去に情報を送ることができる。
多くの科学者たちはこの理論を自分たちが信じる「未来から過去に情報は送ることができない」という妄想に合うようにこねくり回す。
つまり科学者にしてからが「タイムマシンはあり得ない」という誤った考えを前提にしているのだ。その論拠は実は「俺は未来人を見たことがない」というどこかで聞いたようなことを元にしているのだから笑ってしまう。
そもそも我々が済むマクロの世界で時間が戻る現象が観測できないのはエントロピーと大数法則によるもので素粒子の世界の法則とは関連していない。マクロの世界の一般常識をミクロに押しつけようという考え方そのものが間違っている。
大半の科学者は自分達で作り上げた専門用語の後ろに回って、実はひどく愚かであることを隠し続けている。
古代中国の品である渾天儀は星座を計測するためのものだと推測されていたが、その説は考古学者の間では長い間否定されていた。実際の星座と位置が合わないためである。
大勢の考古学者の誰も、時間が経過すれば星座の位置が変わるのだという単純な知識を知らなかったのだ。
地質学者は古いエジプトの金鉱山地図からその場所を何とか割り出そうとしていた。その時代の技術では掘り出せなくても、現代技術なら十分に掘り出せるからだ。だがどうしても発見できなかったので、その地図は偽物ではないかと思われていた。
地質学者たちは当時の古地図は南を上にして描いてあることを知らなかったのである。現代の地図はどれも北が上に揃えてあるという常識を押しつけた結果がこれである。
まさに自縄自縛。
大笑い。
普通の科学者なんてこの程度のものである。
さて、話を戻そう。光の速度に近づくにつれてその物体の時間は遅くなる。亜光速ではほぼ時間は止まる。
ではどんな場合でも光速でしか動けない光子の場合は?
もちろん光子の時間は止まらなくてはならない。だから光子は発生から消滅する最後の瞬間まで時間の束縛を受けない。
そもそも時間というのは実体を持たない。
「距離÷速度=到達までの時間」が本質である。距離と速度があって初めて時間は認識できる。
この観点から時間というものの実体は存在せず、それは各種の物理現象から疑似的に派生した媒介変数に過ぎないと主張する科学論まである。
その傍証として、我々は重力子は検出できているのに、時間子というものはまだ検出できていないことが挙げられる。
さて、この双子光子の発生器を作りこれが受信機とする。光子を送る先の機械を未来に送れば、そうして初めて未来からの情報を得ることができる。未来で人間の体を分解して情報に変え、過去でこれを再現すれば事実上のタイムマシンができることになる。
では我々の世界に未来人が現れないのは何故か?
答えは簡単。この方式のタイムマシンは受信機を作った過去にまでしか戻れない。そして我々はまだ受信機を作り上げていないということなのだ。
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