2 題名:お願い、どうか⋯⋯。
あ、チョウチョ! そう幼いながらも追いかけた私はチョウチョからすればどれだけ
私は虫がそれでも大好きだった。だから虫の研究だって進めたし、世間にどう思われようと気にすることはなかった。
このご時世、研究者は多い。でも紙の劣化も多い。劣化が免れず虫譜を書き進めるもなくなったものも数知れず。
それでも私はどれだけ貧しくなろうが生態を、観察をし続けていた。それでも躊躇いもなく無邪気にやってきた行為が未だに頭を離れない。
そんな生活も苦しくなり、等々底を着き始めていた頃のことだった。突如、巷で変な噂が流行り始めたのだった。
その噂は願いを叶えるお花というものだった。どれだけ喜んだことだろう。これで貧しさとおさらばだなんて思ってはいた時すらもチョウチョのこと、虫のことが頭を離れることは片時もなかった。
そんなある日、ついに私は噂の出どころにあるお花を手に入れた。でもそのお花を何故か譲ってくれた人はヒドく疲れた顔をしていた。
そんなことも気にせず、私はウキウキ気分で家へと足を進めた。何がいいかな? 暖かい布団? 暖かい食事? あ、氷と薪も少し欲しいかも。
なんて淡い妄想を抱きながら。家へと着くと、玄関付近に一匹のチョウチョがひらひら、ひらひらと舞い飛んでいた。
私はついお花を持っていたことを忘れて、もっと見たい観察したい。じっくりと観察していたい。
そう思ってしまった。チョウチョはみるみると身体を硬化させて行き、慌ててチョウチョを手に乗せるとチョウチョはみるみる透明のような美しさを携えた。
それは――まるで鏡の破片のようだった。
巷で噂のあのお花。例えこの行動が身から出た錆だったとしても。
今だから確実に言える。あのお花は人間の欲望には未だ早い存在だった、と。
チョウチョはみるみる鏡の破片のような身体へと化し、動かなくなった。それは自分の中の欲望の恐ろしさを知る要因ともなった。噂ではお花は欲望どおりになると聞く。
つまり――これが私の欲。なんて身勝手なんだろう。青い鏡のように煌めき硬化するチョウチョ、つまり何時でも観察し何処に行くこともない。永久に。私らしいと云えば聞こえは良い。
でも実際はタダの縛り付け――、我儘だ。
私はあのお花を燃やそうと思った。こんなものがあったら人生狂わされてしまうからだ、と。そう思い私は何の躊躇いもなく火に焚べてしまった。
その瞬間、私は動けなかった。でも身体を見ると何処かで見たことがあったのだ。そう、あの鏡のチョウチョだった。
私自身の身体の方はどうなったのかは分からない。一歩足りとも動けなく。
ふとその時、願いを叶えたら代償は必要だと言うのを思い出した。私の取った行動はきっとマズイものだったのだろう。
もう二度と元に戻ることはないのかもしれない。私は後悔をし続けた。何日も、何日も。
時が過ぎ去り、いつからかこう思うようになっていた。もし似たようなことをしている人がいたら助けてやって欲しい。そしてあのお花に警告してあげて欲しい。どうか⋯⋯、と。
だけども、彼女の願いは聞き届けられることはなかった。そんな皮肉も込めて。題名、お願い、どうか⋯⋯。
「どう思った?」
そういっちょまえに首を傾げ可愛こぶりながら聞いてきた。
「語りアイドルなんてどう?」
「急にどうしたの?」
「いや、別に。」
本当は似合うかなと思ったとか言えない。女装すら着こなしそうだし。それくらいの童顔。いいや、数多の男のハートを打ち抜いた変な男だからかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます