第23話【幼馴染の気持ち】
「それで? 可愛い可愛い女の子達に料理を振舞う事になったから幼馴染の女の子である私に料理を教えてほしいと?」
「そうです……」
香澄に事情を話したところ、何故か声のトーンが少し下がりちょっとここで正座してと言われて正座させられている。
俺は一体香澄のどの気に触れてしまったと言うんだ……。
「まぁ別にいいけど。ふんっ!」
これ絶対に良くないやつだ……。
それにさっきからボソボソと何か呟いてるし怖い……。
「本当にありえない……なんで私が他の女の子に振舞う料理の特訓の手伝いをしなきゃいけないのよ……そんなの私が距離を縮めてるみたいじゃない……私ですら翔太の手料理食べたことないのに……いや、でも今日翔太の手料理を食べれる⁉」
「あ、あの……」
「そういえばさ、手料理を振舞うんだよね?」
「そうだけど」
「手料理ってことは別にスイーツでも良いって事だよね?」
「まぁ確かにそうだね」
いや、むしろスイーツの方が皆のうけは良いかもしれない。
「ついでに夕飯済ませちゃおうと思ったけどスイーツの方が私も作り慣れてるしスイーツ作らない? 夕飯は私が作るから食後のデザートを作ろうよ」
「良いねそれ」
「それじゃあそれで決まりね。うーん、何を作ろうかなぁ~。あ、丁度チョコレートあるしチョコレートマフィンにしようかな」
そう言って香澄は慣れた手つきで材料を取り出し下準備を始めた。
「良い? まずはオーブンを百七十度くらいに予熱しておく。あとはチョコレートを湯煎する……ってそうじゃん! マフィンの型がなかった! 私の家にあるから直ぐ持って来るから私の言う通りの事をしておいて」
そしてやっておくことを一通り教えられて香澄は家に一度帰って行った。
「えーっとまずはホットケーキミックスにグラニュー糖、そして卵を入れて混ぜるっと……ん?」
卵を入れたと同時に俺のスマホが振動した。
見てみると一件の連絡が来ていた。
「香澄からかな……え、由香さんから? ……ッ⁉」
由香さんから送られたメッセージ。
『篠くんのために必死に料理の特訓をする可愛い利香ちゃんをおすそ分け』
そしてエプロン姿で真剣な表情でフライパンを握る花里さんの姿が映っていた。
花里さんのエプロン姿……可愛すぎる……。
……って花里さんも料理の特訓してるのか……それも俺のために⁉
これは俺も頑張らないと……。
まずは香澄に言われたことをやらないと。
「えーっと、混ざったら牛乳をっと」
そして再びよく混ぜてチョコレートを加えて再び混ぜる。
こんなにも何かを混ぜることなんてしたことがないから腕がきつい……。
そういえば香澄へのお礼何にしようかな。
☆
「はぁ、はぁ」
なんで私こんな走ってまで翔太と他の女の子の距離を縮める事してるの……。
もしあの時私がVTuberを勧めていなかったらこうなっていなかったのかな。
でもそれだと翔太は今の様に楽しく伸び伸びと活動できてるとも限らない。
翔太の幸せは勿論嬉しい。今も翔太の幸せのために行動しているんだろうけど、それが自分の首を絞めることになるかもしれない。
私も、翔太と同じくらい……いや、あの人達と同じくらいになれば良いのかな。
でも同じじゃダメ。
「頑張らないと。もっと、もっと頑張らないとダメ。それにもっとアピールしないと。遅すぎたのかな……」
どんな事になっても、それでもやっぱり私は翔太の幸せを優先してしまうんだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます