第22話【料理の特訓】

「いらっしゃい利香ちゃん綾乃」


 料理対決をすると決まった次の日、私たちは由香ちゃんの家に集まることになった。

 理由は勿論料理の特訓!

 私が綾乃ちゃんに料理を教えてってお願いしたら由香ちゃんが私の家で皆で練習しようよと誘ってくれた。


「やっぱり何度見ても慣れないくらい大きいわねぇ~」


 社長令嬢である由香ちゃんの家は物凄く大きく、お庭も広い。

 初めて来た時はずっと周りをきょろきょろしていた。

 綾乃ちゃんは由香ちゃんが本当にお嬢様な事に凄く驚いていた。

 

「もう準備はできてるから早く早く!」


 そう言われて由香ちゃんの後を着いて行った先は綺麗に整頓され広々としたキッチン。

 そしてそこには――。


「皆さん、お待ちしておりました」

「橘さん、今日はおねがいします」


 由香ちゃんの家の専属料理人である橘朱音さんが立っていた。

 由香ちゃんが橘さんにお願いして私の料理のレッスンのお手伝いをしてくれることになったの。


「お嬢様からお話は聞いています。好きな方へ手料理を振舞うために料理の特訓をしたいと」

「ちょ、ちょっと由香ちゃん!」

「まぁまぁ本当の事だし朱音には言っても大丈夫でしょ」

「そ、それはそうだけど……なんか恥ずかしいよ……」


 最初は歩夢ちゃんにだけ料理を振舞う予定だったけれど、由香がせっかくだから篠宮さんにも食べてもらおうと言い出して篠宮さんにも私の手料理を……。

 これで美味しくない料理なんて出しちゃったらもう生きていけない……。


「ふふ、相変わらずですね花里様。凄く可愛らしくて相手方が羨ましいです。それで何を作るのかは決まっておられるのですか?」

「オムライスにしようと思ってる。歩夢ちゃんオムライス好きだしね」

「それではふわとろオムライスを作ってみましょうか。まず私がお手本を見せますね」


 そう言って橘さんは片手で卵を割りボウルに入れ、牛乳を加えて混ぜ始めた。そして鶏肉を炒め始め次に卵をフライパンへ。

 それからは凄い手捌きであっという間にオムライスが完成。

 

「花里様、ナイフで縦に切れ込みを入れてみてください」


 そう言われ切れ込みを入れてみると――。


「わぁ~! ふわとろだ~!」


 お店のようなふわとろなオムライスができていた。

 

「どうぞ花里様」


 スプーンを手渡され、オムライスを掬い口へと運ぶと、口の中で玉子がとろけた。今まで食べたオムライスの中で一番美味しい。

 

「美味しい! こ、これ私でも作れますか?」

「勿論作れますよ。大丈夫です、何度失敗しても食べてくれる人材は沢山いますから」

「はい、よろしくおねがいします!」


 すると由香ちゃんと綾乃ちゃんが後ろでこそこそと何かを話していた。


「ちょっと由香、歩夢ちゃんにはちゃんとあの事伝えたの?」

「勿論だよ、ちゃんと利香ちゃんに篠くんの手料理を食べさせれるようにしてあるから」

「それにしてもあんなに真剣な表情の利香ちゃん久しぶりに見たかも」

「そりゃ大好きな人に振舞う料理の練習してるんだから。本当に可愛い子。本当に篠くんも篠くんだよね~」


 それから何度か失敗をしたけれど、橘さんのおかげでなんとか成功することができた。

 

「うん! 美味しい!」

「これなら篠くんもイチコロだね」


 由香ちゃんと綾乃ちゃんからも美味しいと言ってもらえた! 嬉しい!


「でも一人でこれ作れるかな……緊張して失敗したらどうしよう……」

「大丈夫ですよ。花里様ならできますよ」

「そうそう利香ちゃん覚えるの早いし器用だしね」

「ありがとう! なんか自信でてきた!」


 弱音吐いちゃだめだよね。絶対に篠宮さんに美味しいって言ってもらうんだから。

 それに橘さんにも手伝ってもらったんだもん、ちゃんとしないと!





「どうしようか……料理はできない事も無いけど今のレベルで一位のご褒美なんて到底言えないぞ……」


 料理対決の配信が決まった次の日、俺は自身の立場に頭を悩ませていた。

 一人暮らしを始めてから料理はなるべくするようにしていた。

 けれど誰かに振舞う事なんて一度もしたことがない。


「こうなったら特訓か……コーチを頼めるのは一人しか居ないか……」


 俺はスマホを手に取りある人物に電話をかけた。


「もしもし翔太? どうしたの?」

「ごめん香澄、マジでお願いしたいことがある」


 俺の幼馴染である香澄だ。

 香澄は小さい頃からスイーツを作るのが趣味で良く作っていた。

 そして料理も勿論していた。何度か食べたことがあるがすごく美味しかった。

 

「明日予定とかってあるか?」

「特に無いけど?」

「料理の特訓に手を貸してくれ! マジで頼む!」

「料理⁉ 翔太が料理の特訓⁉」

「そんな驚くなよ……」

「だっていきなり料理って!」


 まぁそれもそうか……。


「まぁ明日なら良いよ。何時に行けばいい?」

「マジでありがとう! 時間は香澄に合わせる」

「それじゃあ夕方くらいに行くね。ついでに夕飯済ませちゃおう。じゃあまた明日」


 そう言って香澄との通話を終えた。

 これでなんとかなったか……?


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