第19話【VTuber学校へ】

「ほ、本当に行くの綾乃ちゃん……」

「てか俺達言っても大丈夫なんですか……」


 俺達は今、VTuber専門学校の前に立っている。

 一体何故こうなっているのか、それはこの前二期生のメンバーで事務所に集まった帰りに俺とルナちゃんはアリスちゃんに呼び止められた。

 そしてこう言われたんだ。


『雫ちゃんがゲストで出る日に私達も生徒側で参加しよう』


 そうして今こうしてここに立っているわけだ。

 

「大丈夫大丈夫、もうこっちの関係者の人には話し付けてあるから! ほらほら行くよー」


 そう言ってアリスちゃんが元気よく学校へと入って行った。


 どうやら今回雫ちゃんがゲストとして参加するイベントは希望者のみが受けれる授業らしく、アリスちゃんが聞いてみた所俺達三人とも参加の許可が得られたらしい。


 俺とルナちゃんはお互い目を合わせ、緊張を胸にアリスちゃんの後を追った。


 教室に入ると既に沢山の生徒が席に座っていた。

 

「結構人居るんですね」

「まぁ私達は部屋の隅で大人しく由香の話しでも聞いてようか」


 極力目立つ行動は避けるよう朝比奈さんから言われてるからな。

 こんな所で活動名なんて口にしたら一発アウトだし些細な事も注意しないとな。


「皆さんおはようございます。早速ですが今日は特別ゲストの方に来ていただいたので、質問や貴重なお話を聞いていきたいと思います」

 

 俺達は勿論特別ゲストが誰か知っているけれど、生徒の人達にはまだ特別ゲストが誰なのかは知らされていない。

 

 そして教室の前にある大きなモニターの電源が付き、下からひょこっと雫ちゃんが顔を出した。


「こんにちは~。ブイラブ二期生美少女アイドルVTuberの雨宮雫で~す!」

 

 雫ちゃんの登場に生徒たちは驚いたり歓喜の声を上げたり、一部の人は熱狂的なファンなのか涙を浮かべる人まで居た。


 雫ちゃんは超人気VTuber。ここの生徒達の殆どの目標となる立ち位置に居る人だ。そんな人の話が聞けて、質問もできて会話もできるなんて夢みたいな事なんだろう。

 

 実際俺も初めてルナちゃんと話す時は緊張や嬉しさが半端なかったから気持ちはよく分かる。


「今日は皆さんの質問に答えていき……たいと……おもい…………ます⁉ な、なんで⁉」


 雫ちゃんは早速俺達の事に気づいたのか固まっている。


「雫さん、どうかしましたか」

「あ、いえ! なんでもないです!」

「それでは雫さんに質問がある方は挙手してください」


 すると俺達三人を除くこの場に居る全員が挙手をした。

 

「それじゃあ雫さんに選んでもらいましょうか」

「それじゃあ最初は一番右後ろの方にしようかな」

「は?」


 雫ちゃんが最初に当てたのは挙手なんてしていない俺だった。

 

 隣に座るルナちゃんは驚いていたが、その隣に座るアリスちゃんはクスクスと笑っていた。

 いやいや笑ってないで助けてくださいって。

  

 でも呼ばれてしまったら質問しないわけないはいかない……。


「え、えーっと……雫さんはホラーゲームで清楚がはがれたと思うんですけど、それからはどういう立ち位置で配信をしていこうって決めたんですか?」

「ぐっ……は、はがれてないからねぇ~。私はずっと清楚だからぁ~。剥がれたやめてね?」

「でも清楚の人って暴言だったりはかないと思うんですよねぇ~」

 

 そう言うと俺のスマホに雫ちゃんからメッセ―ジが届いた。


『終わったらちょっとお話しようね♡』


「あー、いや。雫さんってやっぱり清楚でしたね。俺の勘違いでした」

「そーだよ? 私は清楚なんだから~」


 ここは雫さんの機嫌を取るのが吉だろう。


「じゃあ次はその隣の隣の人」

「え⁉ 私も⁉」


 さっきまでクスクスと笑っていたアリスちゃんはまさか自分まで当てられるとは思っていなかったらしく凄く驚いていた。


「遠慮しなくても大丈夫だよ~」

「んーー。じゃあ雫ちゃんは清楚キャラが剥がれてから登録者数が凄く伸びたと思うんですけど。やっぱりキャラの崩壊は登録者が伸びるんですか?」

「えーっとね? 私清楚です。剥がれてないです。登録者が伸びたのは私が可愛いからです」

「そうなんですね、ありがとうございます」


 すると何故か俺のスマホに雫ちゃんからメッセージが届いた。


『休憩の時に皆連れてこっちに来なさい』


 これまさか土下座パターンですか……。

 

 とりあえずその事を二人に告げるとアリスちゃんは帰ろっかって言ってきたがここで帰ったら何をされるか分かったもんじゃないので止めた。


 そんな俺達と違って生徒の皆の質問は配信時間についてだったり事務所に入るメリットデメリットについてだったりとしっかりとしている事ばかりだった。


 本当にこんな所に俺たちが来て良かったのか……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る