第14話【お持ち帰りする?】
「二人ともお疲れ様」
ルナちゃんとのオフコラボが終わった後、アリスちゃんがご飯に行こうと誘ってくれた。
やって来たのはいかにも高級感漂う焼肉店。
店内は黒を基調としており、お洒落な照明がいくつもある。
そして店に入り店員に案内されたのはなんと個室だ。焼肉で個室なんて人生始めてだ。
「まさかあの彼方くんが私と同期になるなんてねぇ~」
雫ちゃんは肉を焼きながらそう口にした。
「しず……えーっと、何て呼べば……」
危ない、もう少しで思いっきり雫さんと言う所だった。
個室とは言え勝手に活動名で呼ぶのは流石にダメだ。
「あはは、今は個室だから大丈夫だよ。それに雫って珍しい名前じゃないしね。私の本名は
「私は
「私は
「俺は
「へー篠宮くんかぁ。篠宮くんはお酒とか飲めるの?」
「はい丁度今二十歳なので。普段飲まないのでそんなに強くないですけど」
二十歳の誕生日に配信内で初めてお酒を飲んでみたのだが、どうやら俺はそこまで酒に強くないという事が分かった。
それからお酒は一度も飲んでいない。
「わー二十歳なんだ。じゃあルナちゃんと同い年なのか」
「え!? 花里さんも二十歳なんですか⁉」
あまりの衝撃でつい大声を出してしまった。
「わ、私もびっくりしました。まさか篠宮さんと同い年なんて……」
「因みに私と由香は二十三歳だよ。年上だけど一応同期だから気とか全然使わなくても良いから」
「はい、わかりました」
「篠宮くんはお酒飲む? 普段飲まないみたいだけど」
「せっかくなので頂きます。俺にとって今日は色々記念日みたいなものですし」
「私も記念日だから飲む!」
隣に座るルナちゃんが手を上げながらそう言った。
「利香ちゃんはだーめ。お酒弱いとかいうレベルじゃないでしょ」
「そうだよ利香ちゃん」
「でもでも今日はせっかく初めて彼方……篠宮さんとご飯食べれたし逢えたんだもん」
「うーん……じゃあ一杯だけだよ」
「うん!」
追加でお酒とお肉を注文し、焼けたお肉を口にする。
今までこんな高級そうな焼き肉屋に来た事がない俺にとって、このお肉は衝撃的だった。
いくらでも食べれてしまいそうなほど柔らかく上品な味がする。
「それじゃあ改めて篠原くんの加入を祝って乾杯!」
「「「乾杯」」」
まだ全然実感が湧かないけれど、こうして二期生のメンバーと一緒に食事を一緒にして直接加入という言葉を聞くと少しだけ実感が湧いてくる。
まだまだ不安な事の方が多いけれど、頑張るしかない。
二期生の皆だけじゃなくてブイラブ所属の人たちにも迷惑はかけられない。
「これから篠くん大変だからねぇ~特にダンスのレッスン」
「速水さん……今は想像したくないです」
「大丈夫大丈夫、私達でもなんとかなってるんだから」
「篠宮くん歌は得意?」
「歌ならダンスよりははるかにマシだと思ってます」
「ならなんとかなる! ダンスよりも歌唱力の方が大事だからね」
「私~篠宮さんの歌聞きたいですぅ~」
すると隣に座るルナちゃんが俺にそう言いながらもたれかかってきた。
突然の行動に俺は緊張して固まってしまう。
「篠宮さん、私ホラーゲーム頑張ったからご褒美~。歌聞きたいなぁ~」
よく見るとルナちゃんの頬は赤くなってる。
「もー、だからお酒はやめときなって言ったのにー」
「え、花里さんってそんなにお酒弱いんですか?」
「ビックリするでしょ」
「弱くないですぅ……うぅ……」
ルナちゃんのジョッキを見るとまだ半分程しか飲んでいない。
二人が止める理由がよくわかった。
「ごめんね篠宮くん。可愛いからかまってあげて」
「だーい好きな篠宮さんと同期になれてぇ~私幸せ~」
そう言いながら花里さんは俺の腕をがっちりと掴んできた。
あまりの可愛さに俺の頬まで赤くなってくる。
凄く良い匂いがする……。
「篠く~ん。私も大好きな篠くんと同期になれて幸せ~」
そう言って前に座っていた雫ちゃんが俺の所に来てルナちゃんの真似をし始めた。
「ちょ、ちょっと速水さん!?」
「痛っ!」
するとアリスちゃんが雫ちゃんの背中を叩いて俺から引き剝がした。
「あんたは酔ってないでしょ!」
「私だって酔ってるもん!」
「何言ってるのあんた馬鹿みたいにお酒に強いくせに。篠宮くんを困らせないの!」
「うわぁーん。助けて篠くん!」
そう言いながら雫ちゃんはアリスちゃんに元の席に連れて行かれた。
「ごめんね篠宮くん、うちの馬鹿が」
「酷い! 今馬鹿って言った! 馬鹿じゃないもん!」
「この前のブイラブ学力テスト断トツの最下位だったでしょ!」
「あれはあの時たまたま調子が悪かっただけだもん!」
なんだかいつもは画面越しで見ている絡みがリアルで見える事に少し感動をしてしまう。
いや絶対に感動する場面ではないだろうけど。
「どうする篠くん、利香ちゃんお持ち帰りしちゃう?」
「しませんよ! 大問題になりますよ! 俺の今後の人生終了しますって」
「えー、でもでも私はお持ち帰りしてもいいよ~。私は年下でも全然痛ったぁああ!」
雫ちゃんは再びアリスちゃんに制裁を食らった。
「ふざけないの!」
「す、すみません……」
「篠宮くんはぁ~私のだよぉ~」
なんだこの天使は……。
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