第12話【月宮ルナの初ホラゲ配信2】

「え? え待って⁉ 待って待って……え? なんか声しましたよね? 絶対しましたよね⁉」

「うん、しましたね」

「何平然と言ってるんですか⁉ ルナからしたら大問題なんですけど!」

「まだ大丈夫なので進みましょう」

「はぁ……はぁ……まだ大丈夫なんですね……ウワァァァァ‼ なんか来てる‼ 無理無理無理‼ いったぁぁああ! 足ぶつけたぁ」

 

 突然横のドアが壊され、主人公の二倍ほどの大きさの化け物が追いかけてきた。

 いきなりの事でテンパったルナちゃんは直ぐに化け物に追いつかれゲーム画面には大きくゲームオーバの文字が表示された。


「あはははははは!」

「ちょっと彼方さん騙しましたね! もう嫌いです!」

「すみませんすみません、ちょっと反応が見たかったので」


:よくやった彼方。

:一番の敵は彼方だったw

:¥12000 こんな神配信見れて感謝。

:ルナちゃん足ぶつけたって言ってたけど大丈夫w?


「そもそもこれどうしたらクリアできるんですかっ!」

「さっきの化け物から逃げつつ、次の部屋に続く扉の鍵を探すんだけど、まずはその鍵が隠されている場所を示す地図をゲットしないといけないんだけど、その地図はこの部屋のどこかの引き出しに隠されてるんです」

「あの……せめてその地図の場所だけでも教えてくれないですか……」

「残念だけどこのゲームは全ての部屋で重要となる鍵や地図は全てランダムだから俺もどこにあるか分からないんだよね」

「無理無理無理! だってそもそもあの化け物から逃げれる気がしないんだもん!」

「あーじゃあそれはヒントというか答え教えますね。化け物が襲ってくる少し前に通った場所にロッカーがあったと思うんですけど、そこに隠れれば大丈夫です」


:これルナちゃんと彼方のコンビも面白いけど雫ちゃんと彼方のコラボも見てみたいな。勿論ホラゲーで。

:雨宮雫✓ 絶対に嫌だ。

:猫葉アリス✓ それありだね!

:いや雫ちゃんならワンチャン彼方に殴りかかるかもしれないから彼方が危ないwww


「じゃあちょっと化け物から逃げ切るところまではやりましょうか」

「ちょっと彼方さん! だから勝手にリトライ押さないでください! まだ心の準備が」

「直ぐ終わるんで大丈夫です」

「えーっと……ここら辺でしたよね……ッ‼」


 さっきと同じ場所で化け物が扉を壊した瞬間にルナちゃんの身体がビクッと跳ねた。

 けれどしっかりと後ろを振り返りロッカーに逃げ込めた。


「彼方さん! これいつ出て良いんですか!」

「足音が聞こえなくなったら大丈夫ですよ」

「……まだ聞こえる…………まだ聞こえる………………まだ聞こえますよ!」

「もう聞こえないですよ」

「え?」


:恐怖のあまり幻聴が聞こえてて草。

:ルナちゃんには一体何が聞こえていたんだww


「いや絶対に聞こえてたもん!」


 そう言いながらルナちゃんはロッカーから出た。

 そしてゆっくりと進んで行き、さっき化け物が壊した扉の所まで来た。


「その化け物が出てきた所にセーブポイントがあるのでそこに行きましょう」

「セーブ! つまりクリアって事ですか⁉」

「違います」


 一旦セーブをして更に進んで行く。

 この部屋の化け物には一つ特徴がある。それは――。


「月宮さん、このラジオクリックして聴いてみてください」

「これですか……」


 ラジオをクリックすると男性の声が聞こえてくる。


「ルナ英語できないから何言ってるのか分からないです」

「まぁ簡単に言うと、さっきの化け物は耳が凄く良いから音をなるべく出すなって言ってますね」

「……え? ちょ、ちょっと彼方さん? もしかしてこのラジオの音ってさっきの化け物反応しませんよね……? ね?」

「反応しますね」

「やだやだやだ彼方さん! 足音聞こえる‼」


 それを聞いたルナちゃんは急いでさっきのロッカーまで走って行った。


「そういう大事な事はもっと早く言ってください!」

「いやーでもこれはやっておかないといけない事なので」


:これでもまだ序盤だからそこまで怖くない部屋なんだよね。

:これ最後の部屋やったらどうなるんだろう。

:ずっと泣いてるだろうね。

 

「これもう足音聞こえないから出ても良いって事ですよね」

「もう大丈夫ですね」

「その地図はどういう場所にあるんですか? 引き出しとかですか……」

「さっきのラジオが置いてある机みたいな所の引き出しにありますね。もしかしたらさっきの所にある可能性ありますよ」

「お願いだからあってぇ……」


 そんな願いもむなしくそこには地図は無かった。


「もー! なんで無いの!」

「そこにある確率って確か凄く低いんですよね」


 このゲームでは普通に遊ぶ他にもRTAリアルタイムアタックという遊び方がある。そのRTAではこの場所に地図がなければそもそもスタート地点に立てないとされている。

 

「そうだ! もう一回ゲームを最初からやってここに地図が出るまでリセマラすれば良いんじゃないですか?」

「リセマラは禁止で」

「そ、そんなぁ」


:リセマラは流石に草

:発想がww

:リセマラするくらいなら普通にプレイした方が絶対早く終わる。

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