第11話【月宮ルナの初ホラゲ配信1】
「嘘だろ……なんだこの同接……」
ルナちゃんとのオフコラボ配信の三分前、同時接続は既に四万人を記録している。
ルナちゃんが誰かとオフコラボをするのも理由だろうけれど、それよりもルナちゃんが初めてホラーゲームをするという理由の方が大きいだろう。
皆ルナちゃんの悲鳴を期待してるんだろうな。
勿論俺も期待している。
「じゃあ月宮さん始めましょうか」
「い、いやだ……まだ心の準備が……」
「でも配信開始時間になっちゃいますよ」
「今からでも中止に……」
「それはできないですね」
そう言って俺は配信開始を押した。
するとコメント欄の勢いが増した。
「初めましての人も沢山居ると思います、個人VTuberの星乃彼方です。今日は月宮さんと一緒に俺の一推しのホラーゲームをしてもらいたいと思います」
「こんルナー……ブイラブ所属のアイドルVTuber月宮ルナです……本当にやりたくないです」
:もう涙声なの草
:彼方がどのホラゲーを選んだのか期待。
:一番怖いの選べよ彼方。
:オフコラボの時点で神なのにルナちゃんの初ホラゲーとか永久保存確定。
「もうタイトル画面で怖いんですけど……あ、あの彼方さん……私一番怖くないホラゲーでお願いしますってちゃんと言いましたよねぇ……」
「えーっと、それじゃあ俺が今まで配信した中で一番怖いと思ったホラゲー【異界ルーム】を月宮さんにプレイしてもらおうと思います」
「あ、あの今なんて言いました? 嘘ですよね彼方さん。私の聞き間違えですよね……」
「それじゃあ早速やってもらいましょう」
「ちょ! ちょっと彼方さん!? 嘘ですよね! 笑ってないで何か言ってくださいよ‼」
:必死になってて草。
:もう諦めろルナちゃん。
:よくやった彼方、これを選ぶとは流石だ。
:もう泣いてるだろこれww
このゲームは主人公の友達が今話題になっている異界に行く方法を試してみると主人公に伝え、次の日にその友達は行方不明となった。
何を血迷ったのか、主人公は自分も異界に行き友達を助けに行くというストーリーだ。
その異界では幾つもの部屋が存在し、部屋事に怪異が存在する。
「ちょっと彼方さん!? 何勝手にスタートしてるんですか!」
そう言ってルナちゃんは俺の腕を掴んで思いっきり振ってきた。
推しに触ってもらえている……なんて幸せなんだ。
「最初の方は特に何も起きないので大丈夫ですよ」
「最初の方はって後から何か起きるって事じゃないですか⁉︎」
:ホラーゲームなんだから当たり前でしょwww
:何も起きないホラーゲームはホラーゲームじゃない。
:¥5000 頑張れルナちゃん。
:このホラーゲームできれば大体のホラーゲームできるから頑張れ。
「もー、本当に嫌すぎる……」
ルナちゃんは目に涙を浮かべながらキーボードに手を置いた。
最初の方は何も起きず、三十分かけて序盤が終わった。
本来なら十分くらいで終わる長さだ。
:ここまでで三十分かかるならクリアまで何時間かかるんだ。
:ルナちゃんの配信沢山見えるから嬉しい。
:さてここからが本番だね。
そして大きな扉の前で止まった。
その扉は赤黒くいかにも不気味な雰囲気を纏っている。
「うぅ……本当にドア開けなきゃダメ……? 開けたら配信終わっても良い?」
「まだ何もできてないからダメです」
「も~! なんでルナがこんな事しないといけないの!」
そう言ってルナちゃんはドアを開けたが……。
「まだ何も起きないですね」
「まだ……お願いだから何も起きないで……」
:めっちゃ声震えてるw 可愛い。
:この調子だったらクリアするのにあと三時間以上かかるな。
「え……ルナあと三時間もこんな思いしないといけないの……?」
「それは月宮さん次第ですね~。でもこれこうするとダッシュもできるからダッシュしたら早く終われるかもしれないですよ?」
「も~! 早く言ってよぉ~! もう早く終わらせる! うぅ~~。開けるよ皆。開けちゃうよ! んっ!」
そう言ってルナちゃんは勢いよく走り始めた。
「はぁ……もう行くしかないもん! 行くしかないもん……いけいけいけ!」
「そうそうその調子だよ月宮さん」
「あーもうやだやだやだやだ! もういやぁぁぁぁぁあああああああああ‼ はぁはぁ……もう私帰るー!」
「あははははははは!」
勢いよく走っている最中に本棚が倒れて悲鳴を上げるルナちゃん。それに大声で笑うアリスちゃん。
:¥12000 悲鳴助かる。
:¥5000 私助かる。
:怖すぎて
:こうなると思ってた。
:耳が壊れるかと思ったw
:ルナちゃんの悲鳴初めて聞いたかもw 切り抜き捗るだろうなぁ~。
「もう無理……もう無理ぃ……もうやめるぅ」
「せめてこの部屋だけでもクリアしましょう」
「クリアしたらご褒美くれますか……?」
「考えておきます」
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