第10話【二期生を集めた理由】
「いやいや、僕なんかがブイラブなんて大手事務所に入っちゃって良いんですか? そもそも僕なんかで大丈夫なんですか!?」
「何言ってるの、ブイラブは人気VTuberの人しか入れない事務所じゃないわよ。光り輝ける人材はどんなに登録者が少なくとも採用するわ。それに彼方くんみたいに男性VTuberはうちの事務所には少ないから貴重なの」
確かに今のブイラブに男性VTuberは4人だけだ。ブイラブ視聴者の殆どが男性リスナーらしく、女性リスナーをもっと確保したいって配信で言ってた気がする。
「もしかして社長、ここに私達を呼んだ理由ってそう言う事だからですか?」
「その通りよアリスちゃん。彼方くん、ブイラブのスカウトの仕組みについては知ってる?」
「……それって俺が皆の……二期生の仲間になるって事ですよね……」
ブイラブは他のVTuber事務所と違う所がある。
それは〇期生募集以外での所属、つまりブイラブからのスカウトで入った場合、VTuberデビューした年の期生となる。一期生よりも前にデビューした人は一期生という扱いになる。
ただ、どの期生も五人までという決まりがある。それももしかしたら後から変更されるかもしれないけれど。
ルナちゃん達二期生は今から二年前にブイラブに所属し、俺も二年前にVTuberデビューをした。つまり俺がブイラブに入れば二期生という事になる。
実際にブイラブでは四名が後からの加入となっている。
「その通りよ。ルナちゃん達二期生は他の一期生や三期生四期生よりも人数も少ない。それに唯一二期生だけ男性VTuberが居ない。これ以上ないスカウト理由だと思うのだけれど。彼方くん、ブイラブに入ってくれないかな」
正直こんな俺が二期生のメンバーの仲間入りとか荷が重すぎて断りたい。
けれどこんなチャンスも滅多にない。スカウトということはオーディションも何も受けなくていいという事だ。
そんな好待遇で大手事務所に所属できるチャンスを見逃すわけにもいかない。
「正直荷が重いです。俺なんかが二期生のメンバーとしてリスナーの皆が受け入れてくれるのか不安でもあります。でもこんな機会を無駄にしたくないです。俺なんかでよかったら是非ブイラブに入れてください」
「ありがとう彼方くん。そしてようこそブイラブへ」
「これからよろしくね彼方くん」
「同期になったって事は容赦なくあの恨みを果たせるって事だよね」
「あ、あの……雫さんの僕への恨みは一体……」
「あー気にないで良いからねぇ~彼方くんは悪くないからねぇ~」
「あ、あの……嬉しさと驚きで全然声が出ないんですけど……私もよろしくお願いします」
ルナちゃんは凄く驚いた目で口元を手で隠しながらそう言った。
「こちらこそ、VTuberの歴は一緒でも全然知識も無くて事務所の事とか良く分からないですけどお願いします」
「それはしっかり私達でサポートするから任せて! それにマネージャーさんが付くと思うから大丈夫だよ!」
「それと一つ問題があるのよね」
「問題ですか?」
「彼方くんの加入発表をどのタイミングでどうするかを決めないといけないのよね。それはまだ何も考えてないのよ」
ブイラブを推しているリスナーの人からしたら超重大発表になるはずだ。それをどのようにするのか……。
「やっぱりインパクトがあった方が良いわよね。匂わせとかも無しにいきなりって言うのも良いわよね」
「年末の大型イベントで発表とかどうですか?」
「確かに良いかもしれないわね、それかブイラブの周年記念配信とかでもありよね」
なんか俺が想像していたよりも大きな舞台で発表を考えられてるんだけど……。
「あ、あの! 私に一つ案があるんですけど」
「何かなルナちゃん」
「今企画している私の登録者百五十万人記念配信、その配信のスケジュールの最後にライブがあるじゃないですか」
「そうね、今の所ゲーム配信した後に月宮ルナちゃんのクイズ、そしてライブで計画してるわね」
「そのライブの最後に私達二期生のオリジナル曲を歌う時に途中で彼方くんにも歌ってもらうっていうのはどうですか?」
「ルナちゃん! それ良いわね! 採用!」
「絶対皆盛り上がるよ!」
「二期生の皆で歌うって言って途中で彼方くんが歌い始めたらそう言う事って皆分かってくれるだろうしね!」
「そうと決まったら急いで彼方くんの3Dモデルを作成しなくちゃ」
「ちょ、ちょっと待ってください! ルナちゃんの記念ライブなのに良いんですか?」
これではルナちゃんの記念ライブなのに、俺の方が目立ってしまう可能性がある。
「全然大丈夫です!」
「ルナちゃんがそう言うなら決まりだね」
「私たちもそれで異議はないです」
アリスちゃんも雫ちゃんも、その意見に賛成した。
「よし、じゃあ決まったところで一つ彼方くんに質問なんだけど」
「は、はい。なんですか?」
「彼方くん、ダンスはやったことある?」
「あるわけないです」
「それじゃあこれからダンスレッスンも受けてもらうからね。きついよ~」
「あのー、冗談ですよね?」
すると雫ちゃんとアリスちゃんが俺の肩に手を置いてきた。
「……頑張ろう」
「私ダンスレッスンし始めて体重めっちゃ減ったから大丈夫」
「何一つとして大丈夫に思えないんですけど……」
ここに入って行く人のスタイルがみんな良かったのはこれが原因なのか……。
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