第9話【初対面】
遂にやって来たブイラブ事務所前。
遅刻しちゃダメだと一時間前にやってきたが、緊張してじっとしていられない。
少し冷静になってみると色々と不安な要素が出てきた。
星乃彼方の中の人物が俺でがっかりされないか、とにかく不安な要素が次々に出てくる。
「約束の時間まで後十分か……」
コーディネートは香澄にお願いしてもらったから大丈夫のはずだ。
「さっきから何人か事務所に出入りしているけど皆凄く美人だな……俺もそろそろ覚悟を決めなくちゃな」
俺は数回深呼吸をして歩き始めた。
ブイラブの事務所の中に入ると、一人の女性が話しかけてきた。
「申し訳ございません。関係者以外の立ち入りは禁止させてもらってます」
「あ、いえ。今日の三時にここに来るように言われてまして」
「三時……あ、もしかして星乃彼方様ですか?」
「は、はい……そうです」
香澄以外の他人に自分が彼方だと告げたのは初めてだからなんだか恥ずかしい。
「こちらにどうぞ」
「は、はい」
そう言って女性がとある部屋の前まで案内してくれた。
「こちらの部屋で二期生の方と社長がお待ちしておりますので。それじゃあ失礼します」
「ありがとうございます……」
このドアの向こう側に二期生の皆と社長居るのか……。
やばい、手が震える……。
「……何してんだ俺。男だろ」
小さく声に出して自分にカツを入れる。
そしてドアをノックした。
「はーい、どうぞ~」
すると雫ちゃんの声でそう聞こえてきた。
俺はドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開けた。
「おー! 君が彼方くん? 結構イケメンなんだけど」
ドアを開けると直ぐに、明るい金色の髪をした女性がそう言ってきた。
声からして、彼女が猫葉アリスちゃんだ。
VTuberのモデルに負けないくらいのスタイルで顔も凄く整っている。
VTuberではなく顔出しの配信をした方が人気が出るんじゃないかと思ってしまう。
「なんか思ってたよりイケメンでちょっとムカつく」
「あんたどんな感情よそれ」
そんなアリスちゃんの横に座っている茶髪のセミロングの女性が雨宮雫ちゃんだろう。
雫ちゃんもまた、アリスちゃんと同じく容姿が凄く整っている。
「ん? どうしたの彼方くん。固まっちゃって。あはは、緊張してる?」
「そ、そりゃ緊張してますよ」
皆があまりにも美人過ぎて緊張が増すんだけど……。
「それで、ルナちゃんもそろそろ出てきたら?」
「そうだよ、いつまでそこで隠れてるの」
そう言ってアリスちゃんと雫ちゃんはカーテンの方へ視線を向けた。
カーテンの方をよく見ると誰かが隠れている。
しばらくするとひょっこりと顔だけを少しだして直ぐにひっこめた。
少し見えただけでもルナちゃんが凄く可愛いと分かった。
「もー! ほら早く」
「きゃぁ!」
アリスちゃんと雫ちゃんは強引にルナちゃんの腕を掴んで引っ張った。
「ほら、彼方くんだよ」
俺の目の前に来たルナちゃんは綺麗な栗色の髪をしていて整った顔、スタイルも抜群で誰がどう見ても美少女だ。
VTuberとしての姿よりもこっちの方が人気が出るんじゃないかと思ってしまう。
まるで超人気アイドルが引退後にVTuberとしてデビューしたみたいだ。
「は、初めまして。星乃彼方です」
「は、初めまして……月宮ルナです……」
「もーこんな調子で二人でオフコラボなんてできるの?」
「が、頑張ります……」
そんな感じにしていると部屋がノックされ、いかにも仕事ができるって感じの女性が入って来た。
「おー! イケメンくんじゃん! 君が彼方くんで間違いないね」
「は、はい」
「緊張しなくてもいいんだよ。ようこそブイラブへ。それじゃあ今後の事について話していこうか」
「そういえば社長、私達何について話すか聞いてないんですけど何について話すんですか? オフコラボの件とは別の話しって何ですか?」
ん? どういうことだ。オフコラボ以外にも話があるのか?
そんな話を部外者の俺なんかが聞いちゃって良いのか?
機密事項と色々大丈夫なのだろうか。
「それじゃあ単刀直入に言うわね」
そう言って社長は笑みを浮かべて俺の方を見た。
「星乃彼方くん。君をブイラブにスカウトしたいの」
「…………え? 俺をブイラブにスカウト? すみませんもう一度言ってくれますか?」
「星乃彼方くんをブイラブにスカウトしたいの。ブイラブに所属してくれないかな」
「「「「え―――――!?」」」」
社長以外全員この事を知らなかったようで社長以外全員が驚いた。
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