43 国王の愛情

ハリソンは奮闘しているようだが、ライバルに五歩も六歩も遅れている。


男が二人続いて出来て、次は女子と思っている所へ生まれた男子だ。ちょっとだけがっかりしたが、わたしを見て笑ったんだ。生まれたての赤子が笑ったんだ。可愛いしかないだろう。


上、二人は優秀でハリソンに期待するものはなかった。背負わせるものはなかった。好きに生きて欲しい。正直一番可愛い子だが、王室なんぞにいるから、後継を大切にするしかない。後回しになってしまう。



そんななかで少し冷めた子になって、心配していたが、あのジョンを可愛がり子供らしくなった。


そしてあの魔法士を好きになったようだが・・・


見ていて歯がゆい。宰相も騎士団長も自分の地位を使ってあの娘を囲い込んでいる。


だったら、国王のわたしが権力を使ってもいいよな!


祖母の妹が隣国に嫁いでいるが、そこにちょうど年頃の娘がいる。


あの二人のどちらかと結婚させよう。侯爵位くらいは授けてやる。


おぉ侯爵と言えば、ブラックレイク侯爵の所に娘がいるではないか。


ちょっと若いが、早く片付けて置いたほうがいい。ハリソンにどうかなんて、話が出る前に。




◇◇◇◇


今日は、宰相の三男の結婚式だ。午前中、式を終えて披露宴が始まった所だ。


リリーは同級生として招待された。ドレスはさすがにナタリー頼みは無理なので、王妃殿下に手伝って貰って用意した。装身具は前に借りた真珠を覚えていたハリソンが、真珠のネックレスを贈ってくれた。


ついでにとハリソンにエスコートされて、リリーは出席している。


「リリー素敵です。それにして良かった」とハリソンが言う。


ハリソンは王妃とリリーが衣装を選んでいる時、そばをうろちょろして口を出していたのだ。


「ありがとう。それとこのネックレスをありがとう」とリリーに言うと


ハリソンはにこにこ笑って


「いえいえ、どういたしまして」と自分の襟についた真珠にリリーが気がつけばいいなと思った。


結婚したての二人が並んで祝いの言葉に答えている。リリーとハリソンも二人のもとへ行った。



「おめでとうございます」とリリーが二人に言っている。隣りでハリソンは気持ちよくそれを聞いて次に自分がそれを言った。


「おめでとうございます」



「あぁ殿下。リリー嬢。ありがとうございます」とギルが言うと


「あぁ殿下。ありがとうございます。そしてこちらがリリー様!まぁありがとうございます」と新婦がはしゃいだ。


話し込まれては堪らぬと、ハリソンは


「人気者のギルを独り占め出来ないな。またそのうちに」と言うとリリーの腰を押してその場を離れた。



「さすがにギルは人気ね」とリリーが無邪気に言った。


ハリソンはにっこり笑うと


「そうだね」と言った。そして婚約したばかりの二人を見つけると、リリーをそちらに連れて行った。


ハリソンが


「やぁフェルナンド、ジョシー。おめでとう」と声をかけると


ジョシーが


「ありがとうございます。殿下、リリー様」と答えた。


リリーが


「おめでとう、フェルナンド。ジョシー」と言うと


ジョシーが


「正直、いっぱい背伸びしてます。フェルナンド様は大人ですから」と笑うと


リリーが


「フェルナンドは頼りがいがあるから、安心よ」と答えた。


「そう思いますか?安心ですか?」


ハリソンが割り込んだ。


「そうだね。フェルナンドは安心だね」


とにこにこして言った。


それから、リリーの腰に手をかけると


「それでは、またね」と行ってその場を去った。



ハリソンは


「リリー、なにか食べよう。わたしは少しお腹がすいた」とテーブルへ向かった。



「そうですね。どれも美味しそう」とリリーも賛成した。



二人は料理の皿を持ってテーブルに着いた。


「これは美味しい。ゆで卵をなんで和えたのかしら。美味しい」


「そうだね。美味しい」


「こっちも美味しい。野菜を一緒に食べると、もっと美味しい」


ハリソンとリリーが仲良く話していると、近くのテーブルに男が近寄り、こう叫んだ。



「ソフィー!ソフィー。裏切ったな!」


護衛がハリソンを守ろうと集まった。


男が持つ短刀が光った。そして男は短刀を落とした。


ついで男は膝をついた。



リリーがフォークを持って立っていた。

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